1959年の作品。
殺人以外の、あらゆる犯罪を犯した、世にも不道徳な男、
藤村良助(大坂志郎)は、何度目かの獄舎生活から解放されたその日、
監獄の門前で、突如、昔の強盗仲間、大野(植村謙二郎)と小島(佐野浅夫)に襲われた。
2人は、以前、盗んだ大金を持ち逃げした大坂に、仕返しを企てようとした。
しかし、大坂は、うまく、彼らを、まくことができた。
折よく、やって来た列車に飛び乗った、大坂は、
その車内で、大スター、大月麗子(月丘夢路)と同席していた、
自分と瓜二つの男、を発見する。
そして、大坂は、その男が寝込んだところを襲い、服を取り替えてしまう。
大坂を、追跡してきた、植村と佐野は、気絶している男を、大坂と間違え、列車から担ぎ出した。
2人組をまいた大坂は、早速、色事師ぶりを発揮し、月丘の、気を惹いてしまっていた。
月丘は、前日、同席していた男と、まったく別人のような態度に、面喰ってしまったが、
それもそのはずで、大坂の身代りとなった男は、
文部省の役人で、道徳教育界の権威、相良文平(大坂の2役)だったからだ。
相良は、折しも、道徳教育のモデル都市問題で、山城市に行く途中だった。
一方、その山城市では、モデル都市問題で、大騒ぎが起こっていた。
それは、モデル都市に指定されれば、市に転り込む1千万円に目がくらんだ市長一派と、
道徳教育反対派が、駅前で正面衝突する事態で、列車が着くと大混乱となり、
その隙に、相良に変装した、大坂は、姿を消した。
しかし、視察官である、相良の行方不明に、大慌てとなった市長派に、探し出され、
大坂は、無理矢理、校長の朝吹邸に、連れ込まれ、大歓迎を受けた。
初めは、事情の分からなかった、大坂も、やがて、それが分かると、
そこは曲物である、大坂は、役人になりすまし、度胸を決めた。
ところが、この朝吹家、校長の桂馬(信欣三)は、教科書汚職にふけり、
妻の美也子(三崎千恵子)は、運転手の西倉に、よろめき、
長男の圭一(長門裕之)は、ドンファン気取りで、

長女の和美(清水まゆみ)は、恋人の利夫(柳澤愼一)をそっちのけで、
自分の処女権を、三角クジで売りつける、という、超アプレっぷり、を発揮していた。
また、次男の康二(浅沼創一)は、ミステリー狂で、時限ピストルを作り、

完全犯罪を企てている、という、とんだ家族揃いだった。
その頃、相良を、監禁していた、植村と浅野は、
ようやく、彼が、大坂でないかもしれないと考え、慌てて、山城市へ向かう。
そして、そこの学校で、変テコな演説をぶっている、大坂を発見する。
浅沼に、声をかけられた、植村は、彼に、金を握らせ、その夜、朝吹邸に、侵入した。
ところが、浅沼もさるもので、これを機会に、時限ピストルを、大坂の寝床に向けて発射し、
その犯人に、植村たちを仕立て、完全犯罪を遂行しようと企んだ。
その夜、清水から買った三角クジを開けて見て、当っているので喜んだ、大坂は、早速、
清水の部屋に行ったが、ちょうど、そこへ飛び込んできた、柳澤と、大格闘となる。
しかし、その間に、大坂の部屋では、時限ピストルが爆発し、忍びこんだ、2人組は、驚いて、逃げ去った。
市長一派は、この爆発事件を、反対派の仕業と早合点し、大坂を、月丘の別荘にかくまう。
ところが、翌朝、公会堂の道徳教育講演会に、相良が、ヨレヨレのスーツ姿で、視察官だ、と名のって現れた。
植村たちは、呆然としている間に、警官隊に逮捕されてしまった。
その頃、大坂は、月丘と意気投合し、すでに、2人で、この町から出て行く途中だった、というお話。

大坂志郎主演の、十分に、笑って楽しめる、コメディ映画、だと思う。
原作が、三島由紀夫なので、本当は、深いメッセージが、内包されているらしいが、
そういうことは、意識せずに、単純に、笑っちゃえば、いいんじゃないのかな。
だって、62年も前の映画、なんだし。

それから、この映画を観ていて、私は、思わず、気づいてしまったんだが、
たぶん、私は、この映画を、きっと、誰よりも、楽しむことができちゃってたんじゃ、ないのか、って。
というのは、私は、昔から、いつも、女の子を好きになる時、
その子が、女優や、アイドル歌手の、誰々に似てる、
っていう理由で、好きになる、っていう癖が、完全に身についてしまっているのだ。
もちろん、その反対に、その女優が、好きな女の子に似てるから、ますます、好きになる、っていう感じ、でもあった。
だから、この映画1本、を観ただけで、大学2年の4月から、3年の4月まで、彼女だった子、って、
筑波久子、みたいだったな、とか。
大学3年の時、その、筑波久子と別れても、この新1年生の女の子を、彼女にできるんだったら、
それなら、その方が、嬉しいな、って、思っていた子なんか、清水まゆみ、って感じだったし、とか。
他の人には、絶対に、理解できないような、自分だけの楽しみ方を、自分勝手に、思いっきり、しちゃってたな、って。
たぶん、想像できないと思うけど、そういう感じで観ると、この映画は、
私にとって、結果的には、とびきり、いい映画になってしまったんだけど、って。
私は、若い時、数えきれないくらい、恋をして、しかし、結局、全部、ダメになっちゃったんだけど、
それでも、その経験のおかげで、今、こうやって、
余計に、映画を楽しむことができてるわけだから、
あの、数えきれないほどの失恋も、あながち、無駄じゃなかったのかもな、って。
そんな風に考えると、何だか、少し、前向きな気持ち、になれてきてしまってるんだけど、って。
まあ、ほんと、私以外の方々には、どうでもいいこと、なんだろうけど。