鳶色のひとみに誘惑のかげり 金木犀の咲く道を
穏やかな秋の午後、あまりに悲しい報せが届いた。
ずっとラジオ番組をお休みしていたから療養中ということは知っていた。
また元気な声を聞かせてくれることをずっと待っていようと思っていた。
もう待っていられないと思ったら、なぜか涙が流れそうになった。
特別ファンというわけでも詳しいわけでもなかったが、常に心に居てくれるような、そんな特別な存在だったように思える。
アリスのメンバー堀内孝雄さん、矢沢透さん、そして沢山の音楽仲間やファンに愛されていたのだと、今日の午後だけで胸がいっぱいになるくらい思い知った。
まず、山口百恵さんのことを思い浮かべた。
日本の美しい風景を叙情的な詩とメロディーで彩り、日本を代表する愛唱歌になった名曲「いい日旅立ち」
秋になると情景が浮かんできて、さらに素敵にしてくれるようなそんな曲だった。
百恵さん、谷村さん、どちらの歌唱もそれぞれの風景があって素晴らしい。
山口百恵さんの最後のシングル「一恵」の作曲も谷村さんが担当した。それほど百恵さんにとっても特別な存在だったのだと想像できる。
この「一恵」(いちえ)とは「一期一会」と「百恵」を掛け合わせて感謝の気持ちを表したと聞いたことがある。
作詞は「横須賀恵」(よこすかけい)の変名で百恵さん本人が担当している。
彼女の文才は、類い稀のないものを持っていると思う。
そして、山口百恵×谷村新司
には「ラストソング」という名曲も存在する。
いい日旅立ちと同じく作詞作曲共に谷村さんが担当。
1978年の楽曲で引退の約2年前だが、まるでその後の百恵さんの人生を暗示するかのような世界が描かれている。
「ラストソング」という、どこか切なさを帯びたタイトルも、谷村さんならではの感性なのだろう。
ラストソングを聴かないまま、お別れになってしまったことが、今はただただ悲しい。
金木犀の咲く頃に旅立ってしまった。
金木犀の咲く道を通る度に、きっと思い出すだろう。
君の瞳は10000ボルト
作詞:谷村新司
作曲:堀内孝雄
心よりお悔やみ申し上げます。