有名な歌手の方が”皮膚筋炎”とそれに伴う”間質性肺炎”で亡くなったとの報道がありました。

 

”皮膚筋炎”とはどんな病気でしょうか?

文字通り、皮膚と筋肉に炎症を生じる病気です。

筋肉には、筋肉痛や筋力の低下がみられます。

皮膚には上眼瞼のヘリオトロープ疹や手のゴットロン徴候など、特徴的な発疹がみられます。

ですから皮膚科で診断がつくこともよくあります。

 

皮膚筋炎で、命にかかわるのは筋力低下の進行以外に、”内臓悪性腫瘍の合併”と”間質性肺炎の合併”があります。

これらには症例ごとにかなりばらつきがあります。

 

近年では、皮膚筋炎で検出される自己抗体には抗Jo-1抗体などの抗ARS抗体、抗MDA5抗体、抗Mi-2抗体、抗TIF1-γ抗体といった複数の自己抗体があることが明らかになりました。

そして、抗体の種類によって症状や合併症の傾向が異なることも明らかになってきました。

皮膚筋炎は単一の疾患というよりいくつかの疾患のグループといってもよいかもしれません。

 

今回お亡くなりになった方の病名は、”抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎”とのことです。

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の特徴は、

皮膚症状はみられるが筋肉症状が乏しいことが多く、

治療抵抗性・予後不良の急速進行性間質性肺炎を高頻度に併発することです。

 

発症には特に原因があるわけではなく、予防できる病気ではありません。

皮膚症状からできるだけ早く診断し、早期に治療介入することが重要です。

そういう意味では皮膚科医の役割は大きいですね。

治療になるとリウマチ膠原病内科で行うことが多いと思いますが、

症例によって経過が異なりますので簡単ではありません。

 

唯一無二といってもよい歌声で、たくさんの人たちに感動を与えてこられた方がこのような病気になられるのは理不尽なことです。

まだまだご活躍されるはずであったのに、残念でなりません。

心よりお悔やみ申し上げます。