以前寄生虫の”アニサキス”について書きました。

”クリーピング病”も寄生虫による疾患です。

 

昨年12月に青森で130人がクリーピング病になったとの報道がありました。

クリーピング病は”皮膚爬行はこう症””皮膚幼虫移行症”とも呼ばれる寄生虫疾患です。

多くは魚介類の生食によって感染します。

 

かなり前にホタルイカの生食で旋尾線虫によるクリーピング病が多発しました。

これを受けて生のホタルイカを提供する前には−30 ℃で4日間以上、もしくはそれと同等の殺虫能力を有する条件で凍結することが義務付けられました。

現在はホタルイカが原因となることは激減しています。

 

今回の青森の事例は小川原湖特産の”シラウオ”を生食したためと考えられ、”顎口虫”が検出された症例があるようです。

顎口虫はドジョウやナマズなどに寄生しており、かつては”ドジョウの踊り食い”などで感染する例がみられました。

私が学生の頃の教科書には”某大学教授が感染して生じた顔写真”が載っていました。

ご自身を実験台にわざと感染したのかどうかはわかりませんが、インパクトがありましたね。

 

クリーピング病は本来ヒト以外の動物を固有宿主とする寄生虫の幼虫が間違って人に入ってしまったことによって生じます。

ヒトの体は住みにくいので、虫は住みやすい場所を求めて体中をはい回ります。その過程で皮下を動いたときにうねった線状の発疹としてみられるわけです。確実なのは虫を皮膚ごと切り取ってしまうことで、そうすれば虫はいなくなりますし虫の種類も同定できます。ただし、虫の位置を確定することは困難で、何か所も切り取っても見つけられないことが多いです。

 

摘出できなかったらどうなるのか?

というと、固有宿主でないヒトの体では虫は長生きできず、そのうち死んでしまって症状はなくなります。

問題は、”死んでしまう前にどこの臓器に入り込むか”です。

運悪く消化管に入り込んで腸閉塞を引き起こしたり、眼球に入り込んで失明してしまったりすることもあるので注意が必要です。

 

駆虫薬としてイベルメクチンなどが使われますが、有効性についてははっきりしないようです。

ほっておいてもほとんどがそのまま治ってしまう病気ですから、薬が効いたのかどうかの判定が難しいということでしょう。