新型コロナウイルス感染症対策において、政治と科学のせめぎあいが続いてきたことはこれまでに何度か書いています。

 

WHOがそろそろ新型コロナウイルス感染症のパンデミックも収束が視野に入ってきたというメッセージを出しました。

 

政策においても、科学の役割は当初から比べて大きく後退しているように感じます。

感染者の隔離期間は10日間から7日間に短縮されましたし、症状がなければマスクをして最低限の買い物に出てもよいという指針も示されていますが、そこに科学的エビデンスはあまりないようです。あくまで政治的な対応変更ということでしょう。

 

新型コロナウイルス感染症の新しい薬”ゾコーバ錠”の緊急承認が見送られたことも以前書きましたが、この緊急承認について私が誤解している部分がありました。

”緊急性を鑑みて現在のデータで有効性が確認できれば特例的に承認する”ということかと思っていたのですが、どうやらそうではなく、”安全性がある程度担保できて、効果があると推定されれば特例的に承認する”ということのようです。

”効果があると推定”できればよい、というのにはちょっと驚きました。

効果があると推定するための基準は何かあるのでしょうか?

ないとしたら全く科学の入る余地はなく、政治そのものということになります。

そもそも、効果があると推定されるから開発を始めるわけですから、始めた段階で効果は推定されているはずです。

これでは緊急性がある、と政治的に断じられた場合どんな薬剤でも特例的に承認が可能ということになってしまうのではないでしょうか?

 

ゾコーバ錠の緊急承認を求める声は大きいようで、日本感染症学会と日本化学療法学会が承認を求める提言を出しました。

科学的な議論をする場であるはずの学会が提言を出したことに驚きましたが、”効くか効かないかわからない””現在のデータでは効いたとはいえない”薬でも使いたいくらい現場が困っているということでしょうか。