耐震工事をしたばかりの小学校校舎を取り壊して複合施設のビルに建て替えるという杉並区の計画をめぐって、あらたな疑問が発覚した。建て替えにともなう小学校の仮校舎を、阿佐ヶ谷北の住宅密集地にある「けやき公園」と隣接する公営「けやき公園プール」につくるという計画を内部決定しながら、消防車の進入経路などについて東京都消防局といっさい話し合いをしていなかったという。筆者の取材に対し、学校支援課が5日あきらかにした。

 杉並区が仮設校舎建設予定地としているけやき公園の周辺は住宅が密集し、道路も狭くて入り組んでいる。震災時に大規模火災が懸念されている地域でもある。こどもの安全を考えれば、消防車の進入経路を検討するのが当然だが、同課によれば「これから行う」とのことである。こどもの安全を二の次以下に考えているとしか思えない。

 けやき公園プールには、東京消防庁が消火栓を設置しているが、仮設校舎建設に伴うプール解体によって取り壊される。この点ついては、杉並消防署に電話で通知ずみだという。

 杉並第一小学校は2010年―11年度にかけて約1億円をかけて耐震工事を行っている。建物の強度に問題がないことは学校支援課も認めるところだ。では、なぜこれを壊して「複合施設」なのか。素朴な疑問に同課職員はつぎのように説明する。

1 杉1小の建物の老朽化。

2 阿佐ヶ谷地域区民センター(阿佐ヶ谷南)は、耐震工事はすませているが建物が古い。東京電力から借りているため建替えができない。複合化するのがよいと判断した。

3 産業商工センターは耐震性能に問題がある。複合化するのがよいと判断した。土地は区が所有。2,3階を撤去する工事を現在やっている。複合施設ができたのちに完全に撤去する。


 このうちもっともらしい理由は3だけだろう。1も2も、耐震工事を済ませており、建て替える意味がない。
3にしても、現地で建て替えれば済む話だ。

 東電との契約内容、各施設の耐震工事の内容、耐震診断の結果はどうだったのか、説明を求めたが、学校支援課は即答することができなかった。

 複合施設建設にかかるコストも「設計してみないとわからない」といういい加減さである。まさに箱物をつくる行為そのものが自己目的化したずさんな計画にみえて仕方がない。

 なお、杉並区けやき公園と区営けやき公園プールの経緯について、学校支援課は5日、以下のとおりの調査結果を筆者に説明した。

・昭和49(1974)年に中央大学のプール跡地だった一帯を区が買収してほしい旨の請願が地域住民よりだされた。
・昭和51(1976)年、区が買収。同年、公共プールと公園を建設してほしい旨の請願が出される。
・昭和52(1977)年、請願採択。
・昭和56(1981)年6月、公園と新設したプールが開設された。


「当時、阿佐ヶ谷地域に体育施設がなかった。阿佐ヶ谷中学校にプールがなかったのが、公園とプールをつくった理由だった」と同課職員は説明した。一部国有地との説明が区ホームぺージにあるが、どの部分が国有なのか、きょうの時点ではわからなかった。