夏を携えて
人生、中々、望んだ通りには進まなく、
時には悔しい思いをする。
願い事はいたって単純なのだけれど、
自分だけでは事足りず、ぐっと歯をくいしばる。
歯をくしばってばかりだと、怖い顔になっちゃうなと、上手いこと面白い顔になれるように、
コミカルなところまで持っていこうとする。
人間、がんばりすぎると、面白い顔になったりもするのだ。
それは、そんなに悪いことではない。
今日、少年二人が連れだって歩いているのを見かけた。
コンビニの前。
どこかに出かける途中だろうか。
楽しそうに話をしていた。
彼らは夏休みなんだよなぁと、しみじみ。
夏をTシャツの袖に携えて歩いていた。
自分にも、少年だった頃があり、夏休みがあったのだと思うと、不思議な感じがした。
いまいちピンと来ない。
でも、確かに夏を越えてきた。
夏の記憶が、チラチラと頭をよぎる。
少年の頃、自分は何を思っていただろう。
何を見て、それから、何をしようとしていただろう。
おぼろ気な記憶は言葉にはならない。
感じていた感触だけが胸に残る。
確かに言えることは、その頃から、
願っていたのだということだ。
七夕の短冊には書けなかった、
漠然とした願いを、自分はまだ続けている。
願い事はいたって単純なのだ。
ただ名前が見当たらない。
少年達が歩いていった先に、夏が大きな口を開けていた。