聖ヨーランの伝説/あすなろ書房
¥1,365
Amazon.co.jp

ウルフ・スタルク/文 
アンナ・ヘグルンド/絵 

菱木晃子/訳 あすなろ書房

 

またウルフさんの本を選んでしまいました。私はこの人の感性が好きなのでしょう。ヨーロッパ各地に残る竜退治の伝説をウルフさんの美しい文章でお楽しみください。

 

●ものがたり

3人兄弟の末っ子ヨーランは旅に出ることとなりました。父親から贈られた「心の声のひびくがままに」という言葉を胸に旅を続けていると、東の国で人食い竜が出るというウワサが聞こえてきました。しかも王様の命令で、毎月1人ずつくじ引きで若い女性が選ばれ、生け贄にささげられるという恐ろしいことが行われていました。ある時、王様の娘である美しいお姫さまが選ばれることとなり、ヨーランは……。

 

●この童話を書いた人

以前紹介した『黒いバイオリン』や『地獄の悪魔アスモデウス』を書いたウルフさん。清らかな童話の中に、人間の醜さをたくみに盛りこんで、人生の真実を描こうとしています。

 

♪物語に登場する木Treesと花Flowers

ヨーランが旅している間、彼の目を通して、多くの種類の木や花が描かれ、物語の中に溶けこんでいます。さまざまな表現の中でも、とくに心響くのはこの文章でしょう。

 

ああ、なんて世界は美しいんだろう。

キツツキ、松ぼっくり、木を走りまわるリス、

きれいな葉をひろげるシダ、

すべてのものに、それぞれの美しさがある……

とヨーランは思いました。

 

木々や草花がこの世に存在している喜び……こうしたヨーランのピュアな感性が伝説として言い伝えられているのか、ウルフさんの空想なのか、わかりませんが、この文章と出会えただけで十分幸せだと思えます。