- 黒いバイオリン/あすなろ書房
- ¥1,050
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『Den svarta fiolen』
ウルフ・スタルク著
アンナ・ヘグルンド/絵
菱木晃子/訳 あすなろ書房
●ものがたり
寝たきりの妹サーラを前にして、何を話したらいいか、わからないぼく。
「病気の人と話をするのは、むずかしい。なにもかも、むなしく聞こえる。うそっぽくて、どこかまちがっている感じがする」。
ある日、ぼくはサーラからバイオリンを弾いてほしいと頼まれます。パパが弾かなくなって、壁にかけられた黒いバイオリン。自分が下手なことを知っているぼくは最初こばみますが、弾き始めると、サーラと過ごした楽しい風景が次々と映し出されました。しかし、ベッドのはしっこには黒いマントをはおった死神が座っていたのです……。
●この絵本を書いた人
先日、紹介した『地獄の悪魔 アスモデウス』と同じ作者、画家による小さな絵本です。
妹の死を目前にした兄のどうしようもない苦しさ、むなしさをこうも愛おしく、あたたかく描くウルフさん。悲しみも苦しみも、いつか喜びにかえることができる、とささやきかけてくれているようです。
ウルフ&アンナペアの絵本を訳しているのは菱木晃子(1960-)さん。この物語の本質がしっかりと伝わるのは、スウェーデン語を日本語に、日本人の心に届くように訳していく菱木さんの力も大きいと思います。
絵本に登場する木Treesと花Flowers
モミの木、リンゴの木、シラカバの木、ライラックの花。そして、バイオリンは木で作られています。大地に立っていた一本の木が人々を楽しませる存在になっていく……ステキですね。