- オオカミと氷の魔法使い (マジック・ツリーハウス (18))/メディアファクトリー
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『マジックツリーハウス 18オオカミと氷の魔法使い』
メアリー・ポープ・オズボーン著 食野雅子訳
メディアファクトリー
まだまだあります。北欧神話をインスピレーションとした本!
映画化もされた『マジックツリーハウス』シリーズ。
あらゆる時代にタイムスリップできる魔法のツリーハウスで、恐竜やマンモスのいた時代、ポンペイ最後の日、タイタニック号沈没の時など、さまざまな時代に冒険に出かけるジャックとアニー。
18巻に、氷と雪に閉ざされた北欧神話の世界に飛び込む冒険ストーリーが展開されます。
運命の女神ノルン、片目の最高神オーディン、フェンリルを思わせるオオカミ、そして、悪の存在・巨人など、北欧神話の登場人物たちが活躍します。
大声で怒鳴るコワい巨人の存在に、「生きて帰れないかもしれない!」とドキドキするようなハプニングの連続!
ところが、その巨人はじつは存在せず、ただの風の音だったことがわかります。
雪嵐のビュービューうなる声を人々は人間を痛めつける悪い巨人だと決めつけていただのです。
ここまで読んで、私はこの作家メアリー・ホープ・オズボーンさんは非常に深く物事を見つめ、本質を見抜く心をもった人だと感じました。
なぜなら、ここまでずばりと、北欧神話の悪=巨人が、嵐や大雪など“過酷な自然の象徴”だと書かれた本はほかにあまり読んだことがなかったからです。
学者たちは口を濁すように、「古代北欧の人々は厳しい自然を巨人として表現したのかもしれないなあ」と、小難しい論文の間にちらっと入れているくらいなのです。
私自身、北欧神話の本を書きながら、著者メアリーさんと同じように、「神様たちは巨人が悪いヤツって言うけれど、本当に悪い人なんだろうか。そんなに悪いことをしていないし・・・・・・。吹雪や嵐などを擬人化したものではないのか?」と思っていました。
この本は子供向けですが、深い知識とあたたかな視点で描かれた、とてもステキな物語だと思います。
メアリーさんはやさしい言葉で物語をつづりながらも、厳しい自然と闘い続ける北欧の人々の心もすくいとっているように思えます。
『北欧神話』をもっと知るための副読本としておすすめです。