ふぇいキツネ (北国からの動物記)/アリス館
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『キツネ―北国からの動物記』

竹田津実 文・写真

アリス館


一匹のメスのキツネと出会った作者の竹田さん。

名前はトウ。近くの湖の名前を借りて名づけたそうです。

トウのなわばりにそっとそっと入っていき、「写真を撮ってもいいよ」とゆるしをもらったと書かれています。

この本は竹田さんとキツネとの信頼関係から成り立った一冊といっていいでしょう。

トウが夫を見つけ、子ギツネを産んで、それから巣立ちをさせるまでの歳月がとても自然に撮られています。


1ページずつめくっていくと、「私、キツネのこと、何にも知らなかったわ!」と、思わず微笑んでしまう文章と時々出会います。

たとえば、「狐日和(きつねびより)」という言葉。

快晴で無風。凛とした北の冷気におおわれる時がキツネの大好きな日なんだそうです。


それから、トウが結婚をして巣作りをする時のこと。お父さんキツネがエサを運んでくるシーンがあります。

それを当たり前のように思っていましたが、じつは哺乳類の世界ではとてもめずらしい光景なんだそうです。

「動物の世界ではどの家庭も、お母さんと子どもたちだけで、お父さんがいないというのがふつうなんです」って。

その一文に続いて、

「家庭の中にお父さんがいる動物は、日本では、キツネ、タヌキ、わたしたち人間。この3種だけです」

本当!!???

衝撃的な事実を知って、しばらくこのページの中央で、トウと夫のキツネがキスしているのをぼんやり眺めてしまいました。


ほかにもいろいろ、知らないキツネの生態がやさしく、いとおしく、写真とともに紹介されています。

ただのキツネの写真絵本と思ったらぜんぜん違う、とても奥深く知性にあふれ、生命の営みや家族のきずながしっかりと描かれている一冊です。