ウルグアイの詩人シュペルヴィエル作『バイオリンの声の少女』に心惹かれたのは、以前、東京芸大の音楽の教授にこんな話を聞いたことがあるからです。
芸大に入ってくる学生には特殊な能力をもった者が時々いる。絶対音感だけではなく、共感覚といわれるもの。たとえば、音を聴くと色となって見える能力。音を味覚として感じる能力。またある学生は音が形となって見える能力といった例もありました。
男性はほとんど一生、その能力が続きます。けれど、女性は結婚したり、子供を産んだりするとその能力が消えてしまうことがよくある、と。大人の女性になったバイオリンの声の少女はどうなったのでしょう。