ビロードのうさぎ/マージェリィ・W. ビアンコ
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大切な人と終わりがきても

『ビロードのうさぎ』

マージェリィ・W・ビアンコ/文

酒井駒子/絵・妙訳 ブロンズ新社




酒井駒子さんの絵がとても素敵な絵本です。
別の画家が描いた『ビロードうさぎ』を見たときに、絵が違うとこんなにも物語が変わって見えるのかと思ったくらい、“絵の力”を感じる絵本です。



主人公はビロードでできた、おもちゃのうさぎ。
うさぎの願いはただひとつ。
“ほんもののうさぎになりたい”ってこと。


うさぎをもらったぼうやはうさぎを大切に大切にします。

部屋の中でもお庭でもベッドでもいつもいっしょ。

ぼうやがあんまり大切にするものだから、うさぎはだんだん汚くなっていきました。

そして、最後は捨てられて、ゴミ袋の中で、うさぎは涙を流すのです。

「こんなふうに、おわりがくるなんて…」




絵本の中で、ひとりぼっちになってしまった主人公は、

ほとんどの場合、救いがあります。

大切な友だちが戻ってきたり、新しい友だちがたくさんできたり、

この絵本のような不思議な結末が待っていたり。

けれど、現実はそうとばかりはいかなくて、

去った友だちは去ったままで、ひとりぼっちはひとりぼっちのまま。

そんなことも多いのがこの世の中です。



それでも生きていれば、きっと、

天の神さまは新しい愛を導いてくださると信じたいと思います。

一瞬一瞬を大切に生きて、自分を責めないで、

幸せに思える時間を増やしていくならば。

あたたかな思いでいっぱいに、

心と体と魂とを満たしていくならば。