- お祭りにいけなかったもみの木/市川 里美
- ¥1,260
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- おいてきぼりになったとしても
- 『お祭りにいけなかったもみの木』
- 市川里美/作 角野栄子/訳
- 偕成社
森の中で、もみの木たちがおしゃべりしています。
「クリスマス・パーティーに出たら、どんなドレスを着たい?」って、ひそひそひそ。
私は、お花いっぱいのドレス。
私は、夕やけ色に光るドレス。
私は、七色に光る虹のドレス。
小さなもみの木も自分が着るドレスを想像して、うっとりしています。でも、誰も小さなもみの木にはたずねてくれません。
そんなある朝、車が一台やってきたと思うと、一緒におしゃべりしていたもみの木をぜんぶ、切り倒して、トラックで持っていってしまいました。
「私をおいて、みんなクリスマスのお祭りに行っちゃった。私だけおいてきぼりなんて!」
もみの木はくやしくてしかたありません。
すると、どこからか「あんたはひとりぽっちじゃないよ」という声が聞こえてきました。
一本の年とったもみの木が話しかけてきたのです。やさしい声です。
「おちびさん、あんたはどんなドレスが、きたかったのかい?」
小さなもみの木は嬉しくなって、話し始めました。
でも、「私はおちびさんだから……」とドレスは着られないと思いこんでいます。
それを聞いた、年とったもみの木は
「どんなことはないよ。ねがいをもちつづければ、きっとかなうよ。おちびさんだって……だれだって……」
今度は小さなもみの木が聞きました。「あなたはどんなおしゃれがしたかったの?」
「わたしかい、もう年だから、ゆめをみたってしょうがないよ」
「そんなことはないわ。まっていたら、だれにだって
ぜったいいいことがあるわ。あたし、そうおもってる!」
小さなもみの木は一生懸命言いました。
お互いに、「絶対、あなたの夢はかなうよ」と励まし合っているんですね。
クリスマスの日。
小さなもみの木と、年をとったもみの木は、どんな贈り物をもらったんでしょうね。
何が起ころうと、願いを持ち続けることができる人は幸せです。
おいてきぼりにされても、なにもかも失ってしまっても
あなたのまわりが空っぽになったら、そこは、新しい何かを入れる「魂の宝箱」。
宝箱にガラクタがつまっていたら、美しい宝石を入れたくても入れられません。
スペースをあけて、待っていましょう。
しずかに待ち続けたら、思いもかけない贈り物が天から降ってくるものなのです。