夢を現実にしたいなら
『まさ夢いちじく』The Sweetest Fig
C・V・オールズバーグ/絵と文
村上春樹/訳
河出書房新社
歯医者のムッシュウ・ビボットさんはかなりのやかましや。
自分の小さなアパートの部屋をチリひとつなく、きれいにしていました。
飼っている犬にほえることを許さず、家具の上にひょいっとのったりすれば、きついおしおきをされてしまいます。
つまり、イヤなやつなんですね。
神経質で、自信家で、プライドが高く、
自分以外の人間をぜったいに認めないという、
まあ、あなたのまわりを見渡せば、
よくいる“おれさまがいちばん”タイプです。
そんなある日、ひとりのおばあさんを診察します。
そのおばあさんが診察費のかわりに、と置いていったのが、
2つの<まさ夢いちじく>です。
「このいちじくはあなたの夢をなんでもかなえてくれます」
その夢……。
翌朝、ビボットさんはパンツ一丁で町の中を散歩してしまいます。
なぜって?
それは、夜に見た夢がかなったからなのです。
2つのうち1つを食べてしまったビボットさんはあわてて、豪華な夢を見ようとがんばります。
あと1つのいちじくはぜったい無駄にしないぞ、と心に決めて!
そして、自分に言い聞かせるように、くりかえしました。
「ビボットは世界一の金持ちだ。ビボットは世界一の金持ちだ」
さあ、最後のまさ夢いちじくを食べて、ビボットさんがなったものは?
よくばりは悪夢の始まり。
他者を愚弄(ぐろう)するものには決して、幸せは訪れない。
村上春樹さんの訳で、不思議な夢の世界をお楽しみください。