杉原梨江子と一緒に読みましょ 木の絵本と森の童話-ひとりぼっちのりんごのき


となりのだれかがうらやましいときに

『ひとりぼっちのりんごのき』A lone apple tree

三原佐知子/作 なかのひろたか/絵

福音館書店




青い屋根の家のそばに、小さなリンゴの木が一本ありました。
近くの丘の上にはリンゴ園があり、大きなリンゴの木でいっぱいでした。
小さなリンゴの木はいつも思っていました。
「みんなのところにいきたいな」



初夏、小さなリンゴの木に白い花が咲くころ、

ミツバチたちは真っ白にそまったリンゴ園にあつまりました。
真夏、網をもった子ども小さなリンゴの木の前をすどおりして、

リンゴ園にトンボをとりに行きました。
秋、リンゴがいっぱいに実るころには、

おとなも子どももみんなリンゴ園に出かけていきました。

小さなリンゴの木が、どんなに「みんなのところにいきたいな」と願っても、

大地にしっかり根づいている木は動くことができないのでした。

小さなリンゴの木は、待って、待って、待って……いました。

だれかがそばにきてくれるのを? 

そして? ひとりぼっちのままで?

 

この絵本を読んでいて思うのは、私たち、ひとは歩くことができる、ということです。
「会いたいなあ」と思ったら、会いに出かけることができます。

「ごめんなさい」って言いたいときも、勇気を出して会いにいけばいい。

「好き」と伝えたいひとがいるなら、一緒について歩いていけます。ずっと、ずっと、好きなだけ。

私たちの足は、自由だから!



歩いていきましょう、どこまでも。

あなたがのぞむ道のむこうへ。

あなたの大切なだれかのもとへ。