杉原梨江子と一緒に読みましょ 木の絵本と森の童話-どうぞのいす






















ありがとうの心を忘れかけたら

『どうぞのいす』

 香山美子/作 柿本幸造/絵

 ひさかたチャイルド



うさぎさんが小さないすをつくりました。
いすにはしっぽをつけました。うさぎさんがつくったしるしに。
このいすに、うさぎさんは自分で座ったと思いますか?
いいえ、うさぎさんはいすのそばに、「どうぞのいす」という立て札をつけて、丘の上の大きな木の下において、帰っていきました。



最初に「どうぞのいす」を見つけたのはろばさんでした。
なんて、しんせつないすだろう!と、ろばさんは思います。どんぐりをいっぱい拾って帰るところだったので、座るかわりにかごをいすにおきました。
そして大きな木の下でおひるね……。すやすや、くうくう。
ろばさんが寝ている間に、いろんな動物がやってきました。
くまさんはハチミツをもって、きつねさんは焼きたてパンをもって、りすさんはクリをたくさんもって。
さて、ろばさんが目を覚ましたとき、「どうぞのいす」の上にのっていたものはなんだったでしょう?



「どうぞ」
大切なだれかのために、どうぞ。
知らないだれかのために、どうぞ。

欲望のままに突き進んでしまったあとで、ふと、だれかのことを思う。

このままだと、だれかがかなしい思いをしちゃう、だれかが傷ついちゃうかもしれない。

ページをめくりながら、そう、思いいたることのできる自分自身を思い出してください。

「どうぞ」という気持ちでだれかを思うとき、あなたの心は澄みきっていて、幸せいっぱいだと思います。