杉原梨江子と一緒に読みましょ 木の絵本と森の童話-アサガオ


朝顔を育てている人に読んでほしい絵本

『アサガオ
 194586日 ひろしま』

 むらはしこまち/文と絵

 らくだ出版



主人公のあきこは6歳。今日はお留守番をしています。

お母さんが疎開先の娘(あきこのお姉ちゃん)に会いに行くことになったからです。

弟をおぶって、あきこを近所のおばさんに預けていこうとするお母さんに、おばさんは

「こんな時、おや子ばらばらになったら、だめじゃないの」と断りました。

それでも、お母さんはあきこ一人残して出かけてしまいました。

あきこが見送る足元に、紫色の朝顔が咲いていました。寂しそうなあきこの表情。

その次のページで突然、原爆は落とされるのです。

見開きにわたっていっぱいに書かれた、黒と灰色とくすんだ黄色のピカ。

原爆の閃光をこれほど単純な線で、これほど少ない色数で、書かれた絵は初めて見ました。

次のページをめくると、どす黒い赤色一面に、絵の具をはじいたクレパスの白。

一瞬、何が起こったかわからない、目のくらんだような瞬間が表されていました。

「あきこが あとかたもなく とけてしまったことを知った」おかあさんは、

どうして、どうして、どうして……と、自分を責め続けて、死んでいきました。

一緒に連れていっていたら死ななかったのに、一緒にそばにいてやったら救えたかもしれないのに。

悔やんでも悔やみきれない、すれ違いを、多くの家族や恋人たちが味わったはずです。

言葉少ない絵本は、絵で、私たちに見せ始めます。

あるページにはあきこの花嫁姿を、次のページには赤ちゃんを抱っこするあきこを、その次のページには桜舞う中、入学式で子どもの手をひくあきこの姿を。

未来があったはずの6歳のあきこは死んでしまいました。

ごく普通の幸せが突然、燃え尽きた原爆への怒りを絵本は語ります。




あとがきに、「戦争してはならない」という言葉が書かれています。
なん度、どれほど多くの人が言ってきたことでしょうか。
それでも戦争はなくなりません。