
『おぼえていろよ おおきな木』
佐野洋子・作と絵
講談社
大きな木の陰の小さな家に、おじさんが一人住んでいました。
おじさんはちょっと、いじわるなものの見方をする人です。
郵便屋さんが大きな木を「見事な木だなあ」とほめても、
「おれには とんでもない木さ」と肩をすくめます。
木陰でお茶を飲んでると、小鳥がフンを落として行ったり、
ハンモックをつると、毛虫が何匹もぶら下がります。
洗濯物を干しても、木が陰になってなかなか乾きません。
いやな目にあうたびに、おじさんは言いました。
「おぼえていろよ、大きな木!」
そしてついに、おじさんは木を切ってしまうのです。
すると……?
ひとりぼっちになるのは簡単です。
ただ、「いらない」って、放り出せばいい。
けれど、いつも当たり前にあったものがなくなったとき、
人はどう感じるでしょうか。
空気のように存在していた、人やもの。
相手のいいところを見つけ出せば、
二人の関係はかけがえのないものに変わっていくはずです。
しかし、もはや取り返しがつかないことも、
人生にはあると自覚しておいたほうがいい。