『おかのうえのおおきな木』
ディミター・インオキオフ/文
イワン・ガンチェフ/絵
ささきたづこ/訳
丘の上に立っているおおきな木。
その木もはじめは、ちいさな種でした。
風に運ばれて、丘の上の地面に落ちたのです。
ある日、ちいさな芽を出して、まわりを見回してみました。
丘の上にはほかの木は一本もはえていませんでした。
木はがっかりしました。
ひとりぼっちだったからです。
ちいさな木が背伸びしてみると、野原のずっと向こうの森では、おおきな木がたくさんいました。
でも、木は地面に根をはって動けませんから、森へ行くことはできません。
この丘の上で生きていくしかないのです。
そんな小さな木も、だんだん大きくなって、小鳥たちが集うようになりました。
巣をつくり、卵を産んで、かえったひなは枝に止まって、おしゃべりを楽しみました。
木はもう、さびしくありませんでした…。
あたたかな色彩の絵に心がほっとゆらぎます。
やさしい小鳥、あどけない目をしたリスやヤマアラシ。
いじわるなキツネでさえも、いとおしい、絵のふんわり感が
誰もいない丘に立つ、一本の大きな木の喜びを伝えてくれます。
あなたにはあなたの、ふさわしい友だちはたくさんいます。
無理やり、知らない人が大勢いる場所に出向かなくても、
自分が大きな木のような人間になれば、人は集まってくるのです。
あらしの日も、寒い雪の日も、
あなたという、大きな木の下でなら、安心して生きられると感じるから。