『おおきな木のおくりもの』
アルビン・トレッセルト/作
アンリ・ソレンセン/絵
中井貴恵/訳 あすなろ書房
“大きな木”に心惹かれませんか?
大きな木は、私たち人間より遥かに長い歳月を生きます。
その根元に集う動物や虫たちの命は、木がくれる力にほかなりません。
ある森の中、大きなナラの木がそびえ立っていました。
百年、いえ、それ以上の年月かけて木は育ち、ここまで大きくなったのです。
リスがすみかをつくりました。
小さな動物たちは木の根っこにもぐりこんで、キツツキやフクロウから身を守りました。
けれど、木はだんだんとむしばまれていきました。
アリたちが幹をかじり、カビやキノコもはえ、幹の中が空洞になり、朽ちていくのです。ある日、ハリケーンがやってくると、大きな木はもう耐えきれずに倒れてしまいます。
倒れた木には、ネズミの家族が住みつき、うさぎは幹の中で、冷たい風をよけました。
やがて、もっともろくなって、ムカデやカタツムリやナメクジのすみかとなりました。
こうして、何年か前に枝から落ちたドングリが育ち始め、
大きなナラの木は、土にかえっていきました。そして、
「茶色いまぼろしのような、豊かな土だけが残りました」
森の美しい絵のなかで、淡々と語られるナラの木の一生…。
大きな木がくれる物語は、
この世のすべての存在が、土に還っていくという事実。
ただ、それを受け入れていくことが
命の永遠につないでいくことになります。