『つつじのむすめ』
松谷みよ子・作 丸木俊・画
あかね書房
つづじが激しく赤く、花咲くようになったわけを知る日本の昔話。
山の村に暮らすひとりの娘が、山を五つも越えた先の村のお祭りにいったとき、
ひとりの若者と恋に落ちた。
しかし、お祭りが終われば、二人は会えない。娘は、山を見ながら思った。
「そうだ、山をこえて あいにいけばいい。」
娘は夜、こっそり家を抜け出すと、山道を走って、男に会いに行くようになった。
しかし、眠らずに娘と語り合う夜が続いた若者は次第にやせ、顔色も青ざめていった。
友人たちは若者を心配して、
「そりゃ、魔ものだ。魔性のものだ。にんげんの女じゃあねえぞ」と言った。女の身で、あの山を一夜のうちに五つも越えて通えるわけはない、と。
若者はだんだん娘が恐ろしくなった。そして娘は・・・。
狂うほど愛したゆえに、男が去っていったならば、
男に、生涯残る罪の跡を残すことができる。
あなたという女を、男の魂の傷として、
刻みつけることができる。
狂え! 狂え! 恋する人よ。
狂うほど、愛する男と出会えた女は、幸福。