『モチモチの木』
斉藤隆介・作 滝平二郎・絵
岩崎書店
表紙をひらくと、流れ星がひとつ、降ってきています。この本を読むと、誰もが夜空を見上げたくなるでしょう。自分にも、見えない光が見える心があるだろうかと、ふと不安になって・・・。
幼い頃、母親に読んでもらいました。それからずっと、私の心から離れたことのない、大きな木のお話です。
主人公の豆太はまだ5才。もっと小さなときにお父さんを亡くして、じさまと二人暮らし。夜中におしっこに行きたくなると、じさまを起こして、外のせっちん(トイレのことです)に連れていってもらいます。外には大きな木が立っていて、闇夜に浮かぶ姿は不気味です。その木が「オバケェ~!」と枝を伸ばして襲いかかってくるようで、豆太はこわくてしかたがないのです。
その木は秋には実をいっぱいつけて、おもちの材料になってくれる、おいしい木なんですけどね。おもちになるモチモチの木は、一年に一度、“ひがともる”といわれています。山のかみさまのおまつりの日。じさまは豆太に言いました。「それは、ひとりの こどもしかみることは できねえ、それも ゆうきのあるこどもだけだ」豆太は、「それじゃ、おらはとってもだめだ」と泣き声になって言いました。
でも、豆太はそのモチモチの木に灯ったひを見ることができたのです。弱虫で小さな豆太に、どうして、それができたんでしょうね。
勇気をもつって、どういうこと?
大切に思い合うことの優しさを、嬉しさを、身にしみて感じます。
人は人のために生きられる。人のためになら恐怖も忘れる。
愛する家族に、自分の心が冷たいと感じたとき、心が離れたように感じたとき、開きたい一冊です。