『100000ぼんのブナの木』
塩野米松・文
村上育成・絵
ひかりのくに
“ひゃくまんぼん”のブナの木の森は、とても遠いところにあります。
でもね、耳をすませてごらん。
夏、ひゃくまん本の一本一本にせみがとまると、ひゃくまんのセミがいっせいに鳴く声が聴こえてきます。
秋になると、ひゃくまん本のブナは赤や黄色の服に着がえて、目を楽しませてくれます。
今の季節は、ひゃくまん本のブナの木の森はどんな様子でしょうね?
春になろうとするのに冬に逆もどり。なかなか春がやってこない2010年の春ですが、
森ではきっと、ブナの根元に穴があきはじめています。
雪がとけて、土が見え出すのです。
ひゃくまん個の春の地面。小さな芽がのぞいているかもしれません。
もうすぐ、あたたかな風が森の中を吹きぬけていくでしょう。
四季がうつりかわる森を小さなクマが案内してくれます。
人はときどき、人生をあきらめ、立ちどまってしまうことがあるけれど、
静かに時は流れゆき、立ちどまることはないのだということを思います。