『ちいさなもり』
ロセッタ・セロフィッリ絵
アルベルト・ベネベッリ文
大岡玲・訳 講談社
光り輝く羽根をもったキジが小さな森に降り立ちました。
そこは、背の高い樹木がたくさんある、気持ちのいい森でした。
「ここなら きっと のんびり くらせる」
キジは早速、ふさふさしげった藪の中に巣をつくり始めました。
そこへやってきたのはのうさぎ。その姿を見ると、キジは叫びました。
「でて いけ! でて いけ! わたしの ちいさな もりから!」
次にやってきたのは、もぐら。今度はのうさぎが叫びました。
「でて いけ!」
新しい誰かが来るたびに、この言葉が森の中で響きます。
すれ違うたびに、こわい顔をして、相手をにらみつけます。
明るくて気持ちいい森なのに、住んでいる動物たちの心のなんて狭いこと。
こんな調子で、楽しいのかな?
自分さえよければ他の人はどうなったっていい。
自分の家族さえよければそれで満足。
孤立を選ぶ人生には何の喜びもありません。