15年ほど前、キューバの医療現場を訪ねた際の視察記を、数回にわけてお届けします。今は現地の様子も変わっているかと思いますが、そこで目にした「身体を支える工夫」を少しずつ、綴ってまいります。
【連載】健康を支える知恵を訪ねて ―― キューバ医療視察記
第1回:私がキューバを訪ねた理由
皆さんは「キューバ」という国に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。色鮮やかな街並みや陽気な音楽を思い浮かべる方も多いかもしれません。私が15年ほど前、長い時間をかけてこのカリブ海の島国を訪れたのは、現地の暮らしに根ざした「暮らしの知恵」を、この目で確かめるためでした。
きっかけは、2009年に日本で開催された国際オゾン会議のメディカルセッションです。そこで耳にしたキューバの医師による発表からは、オゾンを医療へ応用しようとする情熱と、現場での丁寧な積み重ねが伝わってきました。
「実際の現場では、どのようにこの技術が人々の健康を支えているのか。その現実をしっかりと見ておきたい。」
研究会のメンバーたちが等しく抱いたその純粋な関心が、視察旅行へと繋がっていくのは、ごく自然な流れでした。
当時のキューバは厳しい経済封鎖の中にあり、先進国では当たり前の薬品や物資が届きにくい状況にありました。けれど、そこで私を待っていたのは、諦めではなく、逞しい知恵の数々でした。
手に入らない高価な化学薬品を嘆くのではなく、酸素から生まれるオゾンのように、身近にある自然の力を最大限に生かして人々の健康を守る。その「足るを知る」医療のあり方は、驚くほど合理的で、かつ人間への深い慈しみに満ちていたのです。
当院が「無添加住宅」という自然素材にこだわり、五感に優しい空間をつくったのも、根底にある思いは同じです。
余計なものを削ぎ落とした先に見えてくる、身体本来の健やかさ。キューバの地で確信した
「自然治癒力の可能性」と「身近なものを生かす知恵」
を、今、このクリニックでの皆さまとの対話に繋げていきたいと思っています。
(視察の合間に、現地の暮らしの息遣いを感じたハバナの通り)