近所の人との話
町内会の集まりで公民館に行ったとき、隣に60代後半の女性が座っていた。普通に挨拶をして、話し合いの途中で分からないことはお互い聞きあったりした。悪い人ではなさそうなのだけど、なんとなく見た目が派手で香水が強めの人だった。お金持ちなのかな?そんな印象を受けた。話し合いが終わって帰る時にその女性と家の方向が一緒だったので話しながら帰ることにした。お家はどこらへんですか?なんてものすごい狭い範囲の会話ってなんか好き。…で、色々話していると必ずお仕事は何をされてるの?に繋がっていく。あー、はいはいお決まりのヤツ(゚∀゚)キタコレ!!「私は専業主婦です」と答えた。
「うそ!絶滅危惧種じゃないの!!すごい!!」と感動された。絶滅危惧種…それは絶滅の危機にある生物種のことである。え?すごい?あれ?見下さないんだ…。生きてるときにまた専業主婦を見られるとは思わなかったとまで言われた。私が専業主婦と言って見下す人と見下さない人がいる。この違いについて私なりに分析した結果、私を専業主婦と知った瞬間に見下す人は私の家を知らない人で、私を見下さない人は私の家を知っているという結果が出た。ご近所さんで私の家を知っている人は、「家の外もお花が咲いてて綺麗にしているし、朝も結構早起きよねぇ…」と私の家や生活を見ている。言い換えれば私の頑張っている姿を見てくれている人だった。家を知らない人は「え?働いてないの?毎日何してるんですか?家にいるって暇じゃない?」とか、自分がいかに大変かを話し始めたりする。人の感じ方は人の数だけあるらしい。しかし、この女性と話をしていて不思議だなと思ったのは専業主婦に感動しているというところだ。私の生活を見ているわけでもなさそうだし、関心もなさそうだ。ただ何度か「今の世の中働いていないってことはお金持ちなんでしょう?」と言った。この女性は最初お金持ちに見えたのだけど、会話が下品だった。なんか違う気がした。
その女性は独り暮らしだった。しかも家は私のリビングから見える。すごく大きな家なのに独り暮らしだとは思わなかった。私は長所でもあり短所にもなるのだけど、人にあまり関心がない。これは父親に似てしまった性格。自由に自分の好きなように何かをしていると、だいたい人に興味を持たれることの方が多い。私は人に興味がないので、その人の仕事とか肩書きは結構どうでもいい。ただ、今この瞬間の私との接し方でその人がどんな人かはだいたい分かる。ただ、この女性、見た目は派手だし持ち物も高価に見える。たかが町内会の集まりでこんなに着飾るか?専業主婦は絶滅の危機だから大切にしなくてはいけないという。言われたときは「えー!」なんて笑ったけど、そういうことは普通言わない。この人なんなんだろう?
「あの、お仕事はされてるんですか?」
もしかしたら初めてじゃないか?と思うくらい言ったことがないフレーズを口にした瞬間だった。
「私ね、僧侶をしているの。この前やっと資格を取得できたのよ!」
やばいやつじゃん…って今ならわかる。でも、私は父親譲りの天然でもあって、しかも自分でいうのも恥ずかしいのだけど、箱に入れられて育ったようなところがあるから危機管理能力がたまに作動しないときがある。
僧侶→ドラクエ
僧侶って聞いたのに私の危機感は作動しなかった。それより何よりドラクエの僧侶が思い浮かんでしまった私は「あ、僧侶って試験があるんですねー」なんて言ってしまった。「試験に合格してすごいなー」とまで言ってしまった。その女性は「あら、そんな風に言ってくれるの?嬉しいわ~」と言っていた。私は「じゃぁ、杖とかも使うんですか?」聞いたら、さすがに「え?杖⁉」とびっくりしていたけど、杖はもう少し歳をとったら使うかもしれないと答えた。私は杖って使える年齢があるんだー。そっかーレベルが上がればってことかーなんて言ってしまって。。。今思うと本当にアホだなと思うのだけど、たまにこうなるのが私だから仕方ない。今思うとレベルとか杖の話から女性は無言だった。
後日、その女性が家に来た。みんなでビデオを見るんだけど一緒に見ない?というお誘いだった。当時私はそこで“そっち”の僧侶と知るのだけど、丁寧にお断りした。ただ、私の関心というのは変な時に作動するわけで、どんなビデオを見るのかちょっと気になってしまった。
…でも、もしもということがある。まさかという坂もある。触らぬ神に祟りなし。帰る時にその女性が一枚のポストカードをくれた。そこには白髪の女性が描かれており、持っているだけで良いことが起こるらしい。ありがとうと言って受け取ったけど、すぐに処分させてもらった。そのあともその女性とは公民館で会ったけど、普通にお話をした。年齢差があるってこういうとき楽だと思った。私はあたり障りなく接したし、彼女もそれっきり私を誘わなかった。