医療現場を根本から立て直す、対話型チーム医療【杉浦のブログ】

医療現場を根本から立て直す、対話型チーム医療【杉浦のブログ】

“元”医師であり、“現”コーチが考える“チーム医療”。
質の高い医療の提供を患者に提供する為には、どうすればよいのか?
コミュニケーション力、所属する課を越えた連携型病院経営、真の“チームビビルディング”とは何か?を訪れた読者様と共に考えられたら幸甚です。

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HIDA

一般財団法人海外産業人財育成協会(HIDA)主催の

第3回 
【看護・介護にかかわる外国人のための日本語スピーチコンテスト】
見学してきました。

外国人労働者の日本語教育に携わっている知人と合流し、
(なにせ私は方向音痴ですので・・・)
会場に向かいました。

スピーチの様子や私が感じたことをお伝えします。


スピーチの募集テーマは、
看護・介護に関連のある事柄について、 御自身の経験から、

・日本の医療施設や介護施設に対する提言
・仕事のやり方に対する提言
・日本人に訴えたいこと
・職場で自己啓発を受けたこと等


を中心としてひとりあたり最大5分のスピーチをする
というものでした。

来日し、日本語教育を受け(皆、母国で日本語を学んでいる)、
数か月後には日本の介護・医療施設で働いている方の
スピーチです。

発表者は北海道、東京、千葉、静岡、神奈川、岡山・・・
と全国から応募があり、

フィリピン人、インドネシア人の方が発表されました。
 *経済連携協定(EPA)のプログラムによる


母国でナースとして働いていたが、
日本にきて介護職を選んだ方もいらっしゃいました。

ナース資格を持ちながら日本では医療行為ができない、
などの理由から辞めて帰国した方もいらっしゃるそうです。


給料が決してよくない日本の介護職とはいえ、
現地での仕事より給料がよく、家族を支えるため、
そういった理由で日本で働いていらっしゃるのかもしれません。

そして、スピーチであるため、
多少はいいことをおっしゃっているかもしれません。

が、スピーチ内容を素直に受け止め、
私が感じたことをシェアーさせていただきます。


スピーチのテーマのひとつは、
日本人への提言です。

多くの方がおっしゃっていたのですが、
外国人から見て、日本人は感情表現が苦手と
感じるとのことでした。

何を感じているのかが伝わりにくいそうです。
 *日本人同士なら感じあえるかもしれませんが・・・


もっともっと笑顔を上手に表現すれば、
スタッフ同志も利用者さんとももっとよい関係を築ける
と多くの方が発表されていました。


会場には、介護職に就くために日本語を学んでいる
外国人の学生さんも30名ほどいらっしゃいましたが、

皆さんスピーチを聞きながら
笑ったり、「ヒュー」と声を漏らしたり、感動して泣いたりと、
確かに日本のオーディエンスに比べて
感情を素直に表現されていると感じました。

国民性と言えばそれまでですが、
職場をよりよくするためには、日本人はもっと
ノンバーバルコミュニケーションを学ぶべきかもなと
感じました。


日本にいて日本語でやりとりするからいい。
ではなく、コミュニケーションは意識的に
学び続けるものだという意見には、
私も同感です。


ある方は、
日本語で本当にコミュニケーションがとれるだろうか。
と不安いっぱいだったそうです。
利用者さんが「お腹が痛い」と言っていると看護師に
伝えようと思っても、

「おなかがいっぱい」と聞こえてしまい、
苦労したという話もされていました。

言葉の壁がある分、彼女は、
心をこめて挨拶をすることおw心掛けたそうです。

そうすることで、
不安が消えていくのを感じたとおっしゃっていました。

自分の不安をどう克服するかよりも、
目の前の人を喜ばせようとすること。
そのために、心を込めて挨拶をすること。

自分よりも相手を優先すること、
利用者さんを家族のように感じること。


その大切さを日本の介護の仕事で学んだと
おっしゃっておられました。


また、多くのスピーカーが同じように言っていたことが、
私たちの仕事はただ、介護の仕事をすればいいわけではない。
ということです。

最初は、移乗動作の介護をはじめ、
介護職の肉体労働的な部分に大変さを感じていたけれど、
もっと大変でもっと大切なことに気付いたそうです。

それは、
利用者さんのことを知ろうとしたり、
(その人が生きてきた人生だったり、そして時には、
 人生の先輩として恋愛のこと、仕事のことの相談に
 乗ってもらったり)
一緒に笑い悲しみ、共感すること。

それが大切だとおっしゃっていました。


ある一人のスピーカーのストーリーをお伝えします。
彼女は、利用者さんの不安をとりのぞきたくて、

「なんでも言ってください。」
「ナースコールでもいいし、私の名前を大声で読んでもらってもいい。」

困っていることがあったら声をかけてくださいと
伝えたそうです。

そうしたらすぐにナースコールが鳴りました。
どうしたのだろう?トイレの介護かな?

と思って利用者さんのところに行くと、
「ありがとね」と伝えられたそうです。

そのためのナースコールだったそうです。


・高齢化社会
・介護職の給料問題
・人財不足

などなど。
日本の介護の問題はたくさんあります。


介護の仕事はやりがいだけではできない。
特に家族を支える男性が給料が足りず、
やりがいを感じていてもやめていくという現実も
あります。


理想だけでは解決できないことは山積みですが、
例え問題が山積みであったとしても、
小さな理想は叶えることができると感じました。

彼らは母国語だけでなく、英語、日本語を喋れます。
「なぜ英語もできるのに介護職なの?」と聞かれることも
あるそうです。

ひとりのスピーカーは、
外国人だからこそのオリジナリティーを発揮して
仕事したいとおっしゃっていました。


病気で受診された時のストーリを話してくれた方も
いました。
彼は日本語が喋れますし、母国でナースをしていたので、
医療知識もあります。

待合にいると、親子が困っていたそうです。
娘さんは少し日本語が喋れますが、親は喋れません。

どうやらフィリピン人の親子らしく、
病院の事務の方が話している内容が理解できなかったそうです。
(保険が切れてしまっているという内容だったそうです。)

彼は
「私はフィリピンでナースをしていました。日本語もわかります。
通訳しましょうか?」
と申し出たそうです。

その援助がきっかけで彼は今、
ボランティア団体の要請を受け、
医療通訳のボランティア活動もされているそうです。


海外の方からの視点を聞かせていただくことで、
私たちにできることは(小さなことかもしれないけれど)
まだまだあるのではないか?

そう思わせてもらえた
スピーチコンテストでした。


杉浦