平成23年度税制改正大綱
昨日、来年度の税制改正大綱が決まりました。
所得税・相続税が増税、法人税が減税となるため、どのマスコミも「企業減税、個人増税」と報道している。
“なんだ、民主党は” という声が聞こえてきそうです。
しかし、中身をよく見ていただきたい。
所得税が増税になるのは年収1500万円以上の給与所得が主です。
これは給与所得控除に上限を設けたもので、元々、給与が増えると青天井に控除も増えるという仕組みが
疑問視されており、長年の議論に決着がついたというものです。
相続税は基礎控除が4割削減されたことによる増税。
これは地価がバブル前に戻っているので、基礎控除もバブル前に戻したということ。
現在の相続税は亡くなった方の4.2%しか負担しておらず、今回の改正により6%に増えると試算されています。
いずれもここ数年の格差拡大とその固定化を是正するという観点からの措置です。
企業減税のためということではなく、経済状況や社会情勢を鑑みたうえでの措置です。
そういった意味では、あまり報道はされていませんが、納税者権利憲章の策定をはじめとする納税環境整備に取り組むことを今回の大綱に入れていることは画期的なことだと思っています。
税は取られるもの、という考えから、納税者の権利をしっかり確立するという考えへと変えていくのです。
今まで減額修正をするための「更正の請求」は1年しか出せる期間がありません。ですから1年超の場合、税務署に対し、「嘆願書」というものを提出して、税金が戻るかどうかは税務署の判断にゆだねられていました。
お上に対して返してください、というお伺いを立てるという方法であり、しかも税務署によって対応の仕方がまちまちでした。
これをきちんとした権利として期間を1年から5年へと改正し、お上にお伺いを立てるという古い考えから国際標準である納税者の当然の権利として制度化するものです。
ぜひ中身を見ていただき、現状との変更額だけに着目する近視眼的な考えでなく、どういった方向に向かっているのか、着目していただきたいと思います。