39.身代り | 隣を歩いていいですか

39.身代り

彼がその日

手にしていたのは


小さなビニール袋とCD


「このCD…」

って言いかけた時、ジャケットを見た私は

「あっ!」

思いもよらない展開だった。

そう、そのCDこそが

私が最近友達から借りてはまってたモノ。


ちょうど友達に返す前で

同じCDを持って

「すごーい」なんて

運命感じちゃったな。


そのCDは洋画のサントラで

それほどメジャーではないと思うから余計にね…。

本当にすごいことだと思ってた。


「この中で何曲目が好き?」

なんて彼の言葉も

離れた場所でも同じ時間に同じ曲を聞けてたかもしれないと思うと

すごくすごく、嬉しかった。


一緒にCDを聴いていると

ビニール袋から何かを取り出していた。

「あんな、お風呂のシャワー掛ける位置低いやん?

だから買ってきた。」

ホームセンターで買ってきたというシャワーホルダーだった。


確かに、私の家のお風呂は

シャワーの取り付け位置は高いところにはない。

(浴槽のほうには高いところにあるけど…。)


でもなんで?私はそのことで困ったこともないし、そのことについて話をしたこともない。

彼が私の家のお風呂に入ったのも片手で足りるほどだ。


何も聞けないまま彼は取り付けを完了させていた。

「ありがとう」そうしか言えなかった。

私にとっては不可解な行動の意味を知ることはなかったけど。


それでも毎日聴く音楽、毎日使うものの背景に彼がいると

心の支えになった。