君の瞳がどこか悲しげなのは、君が叶わぬ恋をしているからだ。

僕は知っているよ?君があの人のことをどれだけ愛しているかを。


幼い気持ちをその胸に抱いて、せつない想いをしているんだね。

精一杯の大好きで、彼を想っているんだね。


僕の知っている君。愛らしい君。
そんなに悲しい顔しないで。僕がそばにいてあげる。

僕がそばにいてあげる。


叶わぬ恋だと解っていても、あきらめられないことがある。
僕は知っているよ?
そうさ、僕も叶わぬ恋をしているから。

それでも恋は、僕らにとってはきっと大切なものなのだろう。
そうさ、恋をすれば、きっと少しだけ強くなれるから。
君も、僕も。


君の一言も、その涙も、まるで儚い雪のようだ。

僕の胸の中に、溶けてゆく。


窓際のあの席で、窓の外、空を仰ぐ君の横顔見つめるたびに、
少しだけ胸が苦しくなることがある。

きっと、あの人のことを思って、あの青い空を見つめている。

彼のことを胸いっぱい想って、きっと今日もまた頬を染める。

そんな君が、僕は大好きだ。
不完全で未完成。

それでもいいって頬笑んだ。アナタは私の髪を撫でる。


まだまだ世界を知らないから。知らないこといっぱいあるから。

不完全で未完成。

それが今の私。

それでもいいってアナタが笑ってくれるから、若いということに劣等感を抱かなくてすむ。
まんまでもいい、って。無理して大人にならなくてもいいよ、って。
アナタがいつもの笑顔で、そう言ってくれるから。

不完全で未完成。

若さなんて大嫌い。

だけどアナタのことは好き。大好き。

だから今ある私の若さも、これからは少しだけ大事にしてみようかなって思う。

アナタのようになりたいって思っても、今の私じゃ駄目なんだなって、解ってる。
若すぎて。幼すぎて。青すぎて。

時が来れば、いつかはアナタのようになれるかしら?

不完全で未完成。
今はそれでもいいんだよ、って、アナタ、頬笑みながら言ったの。

それじゃあ、今は仕方ないんだな、と思って
私は抜けるような青空を見上げた。
雨を見た。
涙が零れた。

あなたの愛した全てのことを、今日もこの胸に抱いて。

空が灰色だった。
あなたは今どこで、この空を見ているのだろう。
あなたの空は灰色じゃないかもしれない。
白い雲間から一筋の光が射し込んでいるかもしれない。
きれいな青空かもしれない。

雨が降る。
空は私のことなどきっと知らない。

それでもいいと思った。
こうやって雨の音を聞いて、あなたのことを思い出せるのなら。

この雨も、いつかはやんでしまうから。

あなたが呟くその言葉は、今の私には聞こえない。
遠く、今ではもう棲む世界の違う人。

今の私には、羽を広げて飛ぶことも、魔法の粉で
世界を薔薇色に変えることもできはしないのに。

それでもなぜ、私はこうして生きているのだろう。

あなたを想い、焦がれ、どんなに恋しくても、決して二度と逢うことは許されない。
それほどに重大な選択を、あの夜の奇跡とともに。

雨粒になって、地に落ち、あなたの世界へ昇華できたならどんなにいいだろう。

ちいさなちいさな雨粒になって。

もう要らぬ約束を、今日もまた呟いて、そっと空を見上げる。
ただ一人、雨を見ていた。
好き。

好き。

あたたかな日差し。きれいな青空。桃色の花びらと、風で揺れる緑色。

好き。

好き。


小さな教室。規則的に並んだ机。古い黒板。少し汚れている窓ガラス。
窓から見える隣の校舎はすごく高くて、まるで、青い空へ続いているようで。

あなたが笑う。にっこりと。やさしく笑う。にっこりと。

ただそれだけで、私はとても幸せな気持ちになる。


あなたが好き。あなたの笑顔が好き。
やさしく笑う、あなたが好き。


その頬笑みを、どうか。
神さま、今はまだ、私から彼の笑顔を奪わないで。


あなたが笑う。にっこりと頬笑んで。目を細めて、口元をほころばせて。
あなたが笑う。優しい笑顔が、あたたかな笑顔が、
私はとても大好きで、いとしくて、せつなくて。

あなたが笑う。やさしい笑顔。にっこり。

あなたの笑顔が好き。あなたが好き。

あなたが好き。

あなたが好き。

ピンクいシャツも似合ってる。緑のシャツも似合ってる。
胸ポケットで携帯がほら、光ってるのに気づいてない。

ときどき見せる苦い表情が、なぜだかすごく気になって、
何考えてるのかなって、思ってしまう。

あなたの笑顔が好き。いつも。笑っているけれど。
あなたが好き。


あなたが笑う。いつもの授業中。
頭を掻きながら。人差し指で頬を掻きながら。

あなたが笑う。にっこりと。やさしく笑う。

あなたが好き。ただそれだけのこと。

でも、

あなたが笑う。
ただそれだけで。こんなにも胸がいっぱいになる。

ほころんだ口元。やさしく細まったその目を。

どれだけの間、私はあなたを知らずにいたのだろう。
どれだけの間、あなたと同じ時を、あなたを知らずに過ごしてきたのだろう。

私の知らないあなたの姿を思うとき、こんなにも胸が苦しい。
もっと早く、出逢えたら良かったのに。
あなたを知らずに過ごしてきた時間が、今ではすごく悔しくて。

あなたのそばに、ずっといられたらいいのにと思った。
あなたから離れてしまう日がいつか来ることが、すごく切ないの。
だから今は、あなたのそばにいられるこの時間が、とても愛おしい。

あなたが好き。ただそれだけなのに。


あなたが笑う。今日も。にっこり。やさしく。

グレイの色したふわふわの髪。寝癖なのになぜかそれさえもすてきに見える。

薄紅色のネクタイが、とても似合っていた。
あなたは行ってしまうのね。私を一人残して。
あなたは行ってしまうの。あの川の向こうへ。

あの道を抜けたら、もう二度とここへ戻ることはない。
森を抜けて、あなたは遠くの街へと去っていくんだわ。


ああ、神さま。どうかあの人に幸せを。
悪魔が悲しみを降り注ぐのを止めてください。
ああ、神さま。


あの人は知らないのだわ。
あの街に行って帰ってきた人はいないの。

そこがどんなにすてきな場所でも。
そこがどんなに新しい場所でも。時折この空を思い出して・・・・

青い空へ消えていく鳩と、流れていく雲と、

麗しい花の上を舞う蝶と、風に揺れるヒナゲシと。

どうしてこんなにも世界は狭いのだろう。

愛する人は、なぜいつもそばにいてはくれないの?
ねぇ、神さま。私の思いを知っておられる方。

いつもそうだった。思いは溶けてゆく。
紅茶に入れた角砂糖がじわじわと消えてなくなるように。
誰にも知られず、聞き入れられずに溶けてゆくの。

哀愁を漂わせ、川縁に佇んだところで何になるだろう。
あなたのいる方角をじっと見つめたところで何になるだろう。

もう二度と逢えはしないのだから。

でも神さま。もし私の願いを聞いてくださるのなら、
今日もあの人が幸せであるように。
森を捨てて去っても、私はあの人が好き。
だから神さま。どうかあの人に幸せを。
もう何も言わないでと。
もう泣かないでと。
あなたの呟きが聞こえてきそうなこの夜に、私は一人で窓辺に佇み。
冷たくも暖かくもない風を感じ、寂しく空を見上げる。暗い空を。

耳元をかすめる。幼いあの頃の唄が、この胸にひっそりと。

何も言わなくても解る。
泣かないでもいい。
そう囁いてくれる風が、あなたの香りを運ぶ。
あなたはあの場所にいるの。今でも。これからも。

星のない空。流れてゆく雲。暗い闇の中で。黒い闇の中で。静寂の中で。
私だけが、息をしていた。
色々なものをどこかで落としてここまで来た。今の私。
あのときの忘れ物。それはなに?

あの人の笑顔。やさしい笑い声。
くしゃくしゃの髪。シャンプーのにおい。
薄紅色の桜の花びら。

あなたにまつわるもの全て。私には宝物。
どうか悪く思わないでね。あなたへの愛で、私は大きくなれたから。
誰よりも大好きだった人。今でも大切な人。
さよなら。きっとまたどこかで会える。
その日が来たらグッバイ。笑顔でまたお別れするの。
大好き。でもそんなこともう言えない。大好き。
もう私のことは忘れて。大好きな人。
いつ書いたものだろう。
こんな事、あっただろうか。
いつのことだったか・・・・
古ぼけたノートの1ページ。
ここには君を知らない僕がいる。
まだ君に出逢う前の何も知らない僕。

君の声も、顔も、やさしさも知らぬまま、
同じ時代を生きていた。
出逢わなければ、僕らはただの物体。
必要ではなかったあの頃、
空気よりも意味のないただの物体。
君に出逢えてこそ、僕は今の僕。
ぼくらの関係は水魚の交わり。
ぼくを絶対に離さないで。
ぼくの手を、ずっと握り締めていて。
ぼくがどこへも行かないように。君が悲しい思いをしないように。

ぼくらの関係は水魚の交わり。
愛を囁くにはまだ若く、恋だと歌うにはもう遅い。
友情はこのままで。
君への想いもこのままで。
ぼくらはどこまで行けるだろう。
遠くに香る。あれは何だっただろう。

甘く切ない恋の匂い。

忘れもしない、甘い香り。

いちごかジャスミンか、桜の花か。


淡く弾けて消えてしまいそうなほど、儚い想い出。

あなたを想い、日々移り行く季節に思いをはせていたあの頃。

あの頃がたまらなく懐かしい。


神様が一日だけ過去を楽しませてくれるなら、あなたと同じ教室にいたあの頃へ。


恋と呼ぶには弱々しく、それでも、あなたを想うだけで胸が穏やかになった。

咲き乱れる花の、甘い香りをかいだ時、わたしはあなたを思い出す。