だいすきな人が、言った。


時間と空間も越えて、あの頃のあなたに逢えたらいいのにと思った。

ううん、きっと逢えるんだね。あなたがそれを教えてくれた。


あなたと同じ空間にいる、そのことが何よりも嬉しくて幸せだと、心から感じていたあの頃。


そうしてあなたとともにいるその瞬間でさえ、ビデオのように、写真のように、

テープレコーダーのように保存しておくことができたらいいのにと思った。


大好きなあなたは、いつでもあの場所にいて、いつでもわたしに頬笑んでくれるから。


愛があるから大丈夫だよ。

そう言って、目を閉じた。


あの頃の淡い思い出が、一枚一枚大切な花びらになって、

今日もまた、この小さな胸の中で咲き乱れる。


ああ、あなたがいるのね。ならばそれだけでいいと思った。


深い深い森の中を、静かに舞ってゆく蝶。

迷わずに、その谷を抜けて進んでごらん。光の差す方へ。


何もこわくないんだって、教えてくれたのはあなただった。

たとえわたしが消えてしまっても、あなたはわたしの中でずっと生き続ける。


この手のひらから、七色の花びらが舞ってゆく。

風に乗って、あなたのもとへ届いてほしい。

赤。黄色。青。紫。桃色。空色。橙。

やさしい風に乗って、はげしい風に乗って、あなたのもとへと飛んでゆくの。


何も、何も言わなくても。この想いはこの胸にある。

何も、何も言えなくても。


あなた。あなた。

その笑顔を、なによりも大切な笑顔を、ずっと奪わないでね。



胸の中で、何度も繰り返す言葉。


それは誰にも言えない言葉。


誰にも明かすことのない言葉。


あなたにさえ、告げることのない言葉。

その笑い声を聞けるだけで幸せよ。

緑のシャツに、グレイのスーツ。

教室から漏れた声が、誰もいない廊下に響く。

笑ってるの、わかる。声が震えてる。


大好き。大好き。
魔法のように繰り返す。

何月経っても変わらない、大好きなあなたの声を。


さっきまでここにあなたがいたと思うだけでこんなにも幸せよ。

さっきまでちゃんとあなたがいたはずなのに、まるで幻みたい。
あなたが去った今となっては、私の心にその幻が残るだけ。

幻なんかじゃなかったのだけど、あなたに逢えるというすごく貴重な幸せが、
私にとってはまるで甘い夢のようで、儚い蝶のようで、
いつか消えてしまうものみたいに感じてしまうの。

好きよ。何度も繰り返した。大好き。誰よりも。

こうして愛する人に巡り会えた幸福を神に祈るわ。
あなたに出逢えなかったら、愛を知ることもなかった。
誰かを想って、こんなに愛しい気持ちになることさえなかったのね。
あの頃の私は無知で、
ジャコメッティやカルダーを知ることさえなかったでしょう。

あなたに出逢えて良かったと、心から想う。
あなたがいることが、私の喜び。
あなたがいるから、めげずになんとかやれてるのだと思う。

たとえあなたと離れても、きっと楽園でまた逢えるから。
私にはその希望がある。
愛を信じて、あなたを信じて、神を信じて祈りましょう。
あなたがいるから、がんばれる。

ああ、高い天で私を見守ってくださるお父様、
あの人に逢わせてくださったことを、感謝しています。


一週間に一度だけ、授業が始まる前のわずか五分にも満たない時間。
それでも私は幸せよ。あなたに逢えるのなら。
逢えないよりは、ずっといい。
あなたに逢えずに過ごした二ヶ月で、逢えない辛さを知ったから。
あなたがいることが、私にとっては神に次いで何よりも大切なことなのだと知った。

あなたの笑顔を、その声を、髪を、仕草を、・・・・そのすべてを。
愛おしむ私がいるように、一日を穏やかな気持ちで過ごせたなら。
あなたを愛せる喜びを、大切にしたいと、今はただそう思うから。
ぼくらはいつでも世界の中心だった。
太陽が何度昇っても。
南風が何度ぼくらの頬をかすめても。

ある時はヒマワリを見上げ、ある時はコスモスの花をちぎった。

ときどき、ぼくらは世界ってよくわからないねってため息をついた。

いつだって、ぼくらは世界の中心でありながら、
そんな「世界」に振り回されていた。

いつだって、ぼくらは「世界」を嫌いながらも、
それでも「世界」に大きな夢を見て、
そして裏切られていた。

ぼくらはいつだって世界の中心でありながら、
いつだって「世界」からは距離を置いた異端児だった。

いつだってそう。
「世界」の端っこにいたんだ。

この事実を、いったい誰が予想した?
ぼくでさえ、今日初めて知ったのさ。

世界に無意味なんてモノが存在するのだとしたら、
ぼくらはもはや存在していないよ。

無意味という意味を、ぼくらは知らないのさ。

だから難しいことがよくわからない。

でもそれでいいのかな。
世界には意味なんて始めからないのかな。


ぼくはいつでも世界の中心だ。
きみも世界の中心だ。

何度太陽が昇っても。
何度コスモスが枯れてもね。

そうさ、ぼくらが生きている限り。
ビーズの指輪が輝いた。左手の薬指にキラリ。

銀色のきらめきと、ピンク色のガラス。


朝起きて、空を見上げれば思い出す。

今日も、あなたのことを。

いつだって忘れない。
いつもそばにいるから。

夜に響く雨音も、青空を隠す灰色の雲も、

きれいなきれいな星空も、

すべてあなたのいるこの世界の風景で、
いつもどんなときでも、そのことを気づかせてくれる。

あなたがどこにいても。それだけは確かなこと。


「寂しい夜には、そっと人差し指で円を描いてごらん。」

兎が教えてくれたのだ。あなたの顔を思い出せる魔法。

森の中でも、ソファの上でも、ベッドの中でも、あなたの笑顔に逢える魔法。

他の人には絶対教えてあげたくなくなるくらい、すごくステキな魔法なの。

好きって気持ちと、ビーズの指輪と、人差し指があればいい。


・・・・彼女にとってこの指輪は、ある種特別だった。他のどの指輪よりもだ。
なぜならば、結婚指輪に見立ててこしらえてもらったものだったのだから。・・・・


また新しい夢を見る。また新しい朝が来る。
私の知らないあなたが、また花を開く。

幻想的であればこそ。夢想であればこそ。

・・・・この部屋にいながらにして、彼女は遠く遠く、果てしない旅の続きを始めたのだ。・・・・
だいすきな人に逢えないとき、元気の出る魔法があったらいいのにな。

目を閉じて、その顔を思い浮かべる。
笑ってる。その声を。瞳を。髪を。
だいすきな靴を履いたら、つま先で三度地面を蹴ってごらん。



好きなカップには冷たいカフェオレ。

夜空にはぽっかり浮かんだお月様。

ピンクの薔薇は夜風に揺られ、天の川はキラキラときらめいて。



あの子が人差し指を振れば、たちまち私は夢の中。

あなたといっしょにあのカフェで、甘いカフェオレを飲んでいる。

ロマンスグレイのあなたの髪が、いつものようにふわりと揺れて。

頬笑んだとき、いつものように目尻と口元に小さなしわができるの。

二人だけの秘密の時間。

大切な宝物は、あなたといっしょにいた空間すべてだった。
あなただった。



たとえ明日あなたに逢えなくても、
この空はあなたの場所まで繋がっているのだと知る。

だいすきなあなたに逢えない日には、あなたを想って空を見上げればいい。
あなたを想って、バリーのウサギを見ればいい。

少しでも、あなたのことを考えていられるのなら、きっとそれでいいんだわ。
逢えなくてもきっと神様はわかってる。

だから、スーツ姿の人を見ると、あなたじゃないかと探してしまう。
シャツもネクタイも、紺色の靴下も、あの日あのときの思い出。
早く早く、あなたに逢えるといいのにな。

お月様を指さしてあなたは言った。
「きれいな満月だね」って。
そんな夜に二人きり、また過ごせるようにと。
なんでもなかったものが、自分にとって大切なものになる。
恋ってそういうこと?

それまで特に気をつけて見ていなかったものが、急に目に留まるようになる。
恋ってそういうことなんだわ。

そうだ、あなたを好きになってから、どれだけ多くのことに出逢っただろう。
彫刻もそう。あの美術館もそう。
彼の唄が大好きになったのも、きっとそうだね。

あなたは知らないの。だけど私にとっては誰より大切な人。


青空だって、緑の中を舞う蝶だって、風に揺れる花びらだって、

恋をすればそれなりにステキに見えてしまう。

乙女にとって恋ってきっとそういうものなんだわ。

今まで知らなかった。
でもあなたを好きになってから、色んなことを知ったの私。

だから、叶わぬ恋が無駄だなんて思ってないわ。

だって、こんなにも満たされてる。

あなたを好きになってから、少しだけ前よりもステキな明日を見つけられるようになったから。
何も見えない真っ暗な夜に、キラキラ輝くステキな小箱を見つけられるようになったから。

だから無駄だとは思ってないわ。
イジワルな誰かが妄想だって嘲っても、偏見の目で私を見ようとも、
私にとってはそれが真実。

イジワルな人はたくさんいて、みんな叶わぬ恋など諦めろと言うわ。
実のならない木など切り倒してしまえと。
でもそんなの嫌。徒花は時に何よりも美しく、きっと私を変えてくれることでしょう。

だから今は。悪魔の囁きには耳をふさいで。
ただ自分の心に嘘はつかないで生きるわ。

ステキな星の夜に、ただあなたの夢を見て眠れるように。


あなたと出逢えたから、もう一度、今まで見てきた物を見に、新しい旅に出よう。
真夏の暑さの中を、あなたと共に歩こう。
この気持ちを忘れないように。愛など知らない、この小さな胸にしっかりと刻みつける。

そしたらきっと、なんでもなくない毎日になる。
愛してごらんよ。
恐がることなんてないじゃない。
ただ思うがままに、愛せばいいだけさ。

理屈じゃない。説明できない。
理解じゃない。共感なんだ。

好きなことに理由なんかあるかい?
なんで好きって、ただ好きとしか言えないじゃない?
僕はそうなんだけど。



夏の日。あの暑い日に、思い出すのはね、あなたの言葉と、唇と、
ロマンスグレイの髪と、笑ったときの目と、大好きなその声と、シャツの色。
好きになったのはいつのまに?
あなたに逢うことが楽しみになったのはいつからだったかしら?

最近、そんなことばかり考えるの。

“愛してごらん?”

向日葵よりも、青空よりも、もっとだいすきな人。
いまはまだ、私から奪わないでね。

暗闇で悪魔がほくそ笑むわ。

でもこの気持ちに偽りはないもの。
誰にも言えない真実。私だけの秘密の恋よ。
あなたにさえ伝えることは出来ないのに。どうしてこんなに満たされているのだろう。

CDをかける。彼の歌を聴く。思い出すのはあなたのことばかり。
笑った顔。怒った顔。
あなたが話してくれたことすべてを、思い出すように。目を閉じる。

星空。紺色のヴェールの上に、星の降るステキな夜よ?
月がぽっかりと浮かんで、風に雲が流れて、
木の陰で妖精が輪を作って踊ってる。

ああ、そうだ。あなただった。私が今までにないくらい愛したのは。

いつかの幻を見ている。



愛してごらんよ。ただ思うがままに、愛せばいいだけさ。

ぽつり、ぽつり、思い出す言葉。
あなたを見てると、
時が止まってくれたらいいのにって思ったり、
あなたと一緒にいる、あなたがそこにいる、その空間すべてを
そのまま取っておけたらいいのにって思ったり、
わたしはいつもよりわがままになる。

あなたがそこにいる。
そのすべてを忘れたくはないと思った。
何もかも、頭の中に、この胸に、そっくりそのまま残しておけたらいいのにって。

それは決して叶わぬことだと解っていながら。


恋をしている。いま、恋をしている。
そのすべてを感謝している。あなたに出逢えた運命に。偶然のような必然に。

好きよ。遠いひとだと解っていても、それでも好きよ。
あなたが言うように、恋も一種の共感なのね。

昨日、あなたが説明してくれたのと同じ。
人混みの中であなたを見た。周りの人は小さくなって、
遠くにいたあなただけが私にははっきりと見えていた。
道の向こうへ消えるあなたの姿を、そっと目で追った。
ジャコメッティはどんな思い?
あなたはどんな思い?
それを知りたいと思った。


あなたが笑う。目尻と口元のしわが私にはとても愛しくて、
思わず頬笑んでしまった。あなたを見てると、いつも気づかないうちに顔が笑ってる。
無意識に、うれしい、たのしいって、きっと感じているんだわ。
このちいさな頭で。ちいさな胸で。愛を知らない幼い心で。

好きよ。大好き。
タイムマシーンがあったらいいのにな。

そうすれば二十二年前のあなたに逢える。

どんなふうだったの?どんなことを勉強していたの?
何に共感していたの?

タイムマシーンがあったらいいのにな。

そうすればあなたが働いていたあの場所で、私の知らないあなたに逢える。

私が知らないあなたを知ることができるのに。


今、こうしてあなたと同じ時代に生きている。
それだけですごく嬉しい。

それでも時々、昔のあなたに逢ってみたくなることがある。
私の知らないあなたに、逢ってみたくなることがある。

今こうしてあなたの笑顔を見れる全てを。

こうしてあなたに出逢うことが出来た全てを。

例えこれが偶然な運命でも。


何か一つが欠けても駄目だった。

きっと神様の贈り物だと思った。

あなたがいない世界なら、生きていても意味がないと思った。


愛を知らない。異世界を知らない。大きな世界を知らない。
ちいさな水槽で泳ぐ魚のように、いつも同じ景色を見ているとしても。

それでもいい。

あなたが好き。

私が知っているのは今のあなた。
きっちりとしたシャツを着て、水色に水玉のすてきなネクタイを締めて、
首から提げた携帯は左の胸ポケットの中へ。
ときどき寝癖で髪が跳ねていても気にしない。だけどおかしくないから不思議なの。

今日もあなたがにっこり頬笑んだ。
一週間分の愛を詰め込むように、あなたの笑顔をじっと見つめる。


愛ってなに?恋ってなに?

あなたのことが大好きで大好きで、気が狂ってしまうんじゃないかと思った。
本気で恋の病に溺れてしまうんじゃないかと思った。
それは普通じゃないことかもしれない。
この気持ちをどうしようも出来なくて。
押さえることも、解き放つことも出来ないまま、ずっと胸に抱えている。

でもあなたが好き。ただ見つめているだけで。

笑って。笑って。笑って。

あなたに逢うことをこんなにも待ちこがれて、
あなたに逢える木曜日が、一週間でいちばん大好きな日になる。

ドキドキする。きゅんってなる。
それはきっとあなただから。
彼を見つめる君の瞳が、きらきらと輝いて。
僕は胸がいっぱいになる。

古い教室の、いつものあの席で。
彼の声に耳を傾け、あの笑顔をじっと見つめながら。

君は今、彼のことを誰よりも愛しく想っている。
そうさ、頬を染めて、世界でいちばん彼が愛しいと、そう思ってる。


授業が済んでも、君の頭の中は変わらない。

‘明日は何色のシャツだろう?ネクタイはどんな柄?’

きっとそんなことばかり考えている。


彼を見つめる君の瞳がキラキラと輝いて。
柔らかな頬はほんのりと赤く染まって。

そして僕は、今日もまた君の右肩に座って、落っこちないように三つ編みを掴んでいる。

十センチばかりの僕にとっては、ここが最高の居場所さ。

もちろん彼に僕の姿は見えていないと思うけど。


彼の前では、君は一人の女の子。少し変わった女の子。

彼は君を見て、にっこり頬笑む。
君は彼のことが、きっともっと大好きになる。

僕が仕掛けた悪戯さ。


彼を見つめる君の瞳がキラキラと輝いて。

青空はとてもとてもきれいで、道には橙の花が咲き、緑の葉が風に揺れる。

そんな午後のこと。そんな午前のこと。

すてきな毎日。