――では、こちらに書かれていることはご理解いただけましたか?


はい



――カウンセリングは有料になります。カウンセリング中にお話くださったことは一切、秘密にされます。外部に漏らすことは絶対にありませんので安心してください。



はい



――カウンセリング内容の記録をとるために、こちらの者が同席します。



・・・はい。



――では、お話ください。



・・・Mクリニックから紹介されてこちらに来ました。軽度のうつでお薬を処方すると言われたのですが、薬を飲まなくてもカウンセリングで治ると言われたので。薬、飲みたくなくて。こちらが紹介状です。



――拝見します。



・・・。



――この紹介状の内容はご存知ですか?



いえ・・・。



――簡単に説明しますとね、カウンセリングを含めた心療内科の治療が必要だと書いてあるんですよ。


はい。



――オーバードライブしてしまったんですね?



・・・え?



――薬をたくさん飲んでしまったってことです。



はぁ



――それでMクリニックに?



・・・救急車で運ばれてK病院に1週間くらい入院したのですが、退院するときに紹介状が出たのでO病院に行きました。そこでは治療の必要はないけれどカウンセリングを受けたらどうかと言われて、また紹介状が出ました。



――入院したのですか?



2日くらい意識が戻らなかったそうで・・・入院していたときのことはよく思い出せないんです。



――どうして薬を飲もうと思ったんですか?



私・・・




――・・・で、薬をたくさん飲んだんですね?


はい。


――旦那さんの薬を?


はい。


――どうして飲もうと思ったんですか?


・・・。


――もう嫌になっちゃった?死んでしまいたかった?


・・・はぁ。


――あぁそう。ちょっとこれ見てくれる?これね、さっき色々質問に答えてもらったでしょ。


はい。


――ここにね、線が引いてあるけど、こっちは身体の方。まぁ、それほど悪くはないけど。


はい。


――で、こっちが気持ちの方ね。これね、あんまりよくないね。あなたのはこっちにきちゃってるね。


・・・。


――軽度のうつですね。薬を処方しますが、飲みますか?


あのぉ・・・お薬飲まないと治らないのでしょうか。


――そんなことはないですよ。


お薬は、飲まなくていいなら飲みたくないです。


――じゃあカウンセリングを受けてみますか?


・・・はい。



――カウンセリングを希望するんですね?



はい。お願いします。


――うちもカウンセリングやってるんだけど、何ヶ月も予約が一杯でね。



――あんまり待たせても悪いから、カウンセリング専門でやっているところがあるから紹介しますね。


――受付でパンフレットをもらってください。はい、もういいですよ。


ありがとうございました。


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~電気配線工事のお知らせ~



明日○月○日午後1時から3時まで

電気配線工事のため業者が屋根および天井裏に上がります。



作業時間の内、20分程度停電いたしますのでご協力をお願いします。

私が立会いしますので、入居者の皆様には在室の必要はありません。



取り急ぎご連絡いたします  大家一郎

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ふん?明日?・・・配線工事か。
そうだよな~、昨日も一昨日もだもんな。
おおかたネズミにでも配線をかじられたんだろうが、漏電でもしてたらことだからな。


一昨日の夜突然電気が消え、ちょうど風呂に浸かっていた私は、真っ裸なのに困ったもんだと、しばらく暗い天井を睨んでいました。


停電か?それともブレーカーでも落ちたかな。こうしていても仕方がない風呂から上がって見てみるか。


渋々風呂から出てきた私は、身体を拭うのもそこそこにして、暗い台所の片隅を見上げました。


確かこの辺りにブレーカーがあったんだよな。ちっ!暗くてよく見えないじゃないか。


しばらく手探りでブレーカーを調べていましたが、どうやら落ちてはいないようです。


変だな、ブレーカーが落ちたんじゃないのか。
もっとも、ドライヤーもエアコンも使っていないのだから、ブレーカーが落ちるわけもないか。
停電でもなさそうだし。
まいったな・・・。


暗い部屋のカーテンの向こう側からは、前の家の明かりが透けて見えるのですから、停電ではありません。
さてどうしたものかと途方に暮れた私は、とりあえず大家に連絡をと携帯電話に手を伸ばしました。


困ったときは大家さん。これが店子の大事な心得なのです。