CROSS ROAD 悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~ @シアタークリエ

 

原作・脚本・作詞:藤沢文翁
作曲:村中俊之
編曲:江草啓太
演出:末永陽一
出演:

アムドゥスキアス:中川晃教
ニコロ・パガニーニ:相葉裕樹/木内健人
アーシャ:加藤梨里香/有沙 瞳
エリザ・ボナパルト:元榮菜摘
コスタ/エクトル・ベルリオーズ:坂元健児
アルマンド:山寺宏一/畠中 洋
テレーザ:春野寿美礼

荒居清香、荒川湧太、小倉優佳、川口大地、柴田実奈
趙 京來、徳岡 明、中野亮輔、宮田佳奈、山崎感音

 

 

朗読劇からミュージカル化しての再演

今回初見です

 

あらすじと登場人物紹介(公式)

 

19世紀、イタリアのヴァイオリニスト/作曲家ニコロ・パガニーニのお話。

その演奏技術の素晴らしさに「悪魔に魂を売った代償」と本当に言われていたそう。その「悪魔」を登場させて、悪魔と契約したパガニーニの運命を物語にしてしまう着眼点に感服。

 

思いのまま人を操る悪魔アムドゥスキアスを演じるのは中川晃教さん。妖しさとお茶目さが同居しつつ冷酷無慈悲な凄みもある中川アムドゥスキアスの存在感あってこそ、命を削るように演奏し音楽に縛られてくパガニーニの苦悩が深く見せられていたように思います。また音楽を心から全身で楽しんでいる様子が、あっきーそのもので。こんなに「音楽の悪魔」に相応しいキャスティングはちょっと他に思いつかない。

 

その悪魔に易々と付けこむ隙を与えず最後まで凛とした存在だったニコロの母テレーズは春野寿美礼さん。母の期待が悪魔の契約まで追い込んでしまった面も否定はできないけれど、母としてはニコロがヴァイオリンと音楽を心から楽しんでくれていれば十分に満足だったのですよね。息子を信じ愛を与え続ける母の姿が神々しかったです。

 

パガニーニを取り巻く二人の女性。

ひとりめがジプシーのアーシャ。陽キャで溌溂としていて『ザ・ビューティフル・ゲーム』の時とはまた違う印象だった加藤梨里花さん。脚本・演出の問題だと思いますが、キャスト紹介にある「天才ではないが、流浪の旅で覚えた様々な楽器や音楽を知っている」面があまり見受けられず、アーシャの存在意義って??と思ってしまったのが惜しい。

ふたりめはエリザ・ボナパルト=元榮菜摘さん。ナポレオンの妹と浮名を流したのも史実なんですね。

 

坂元健児さん演じるヴァイオリン教師コスタと作曲家ベルリオーズは、お金への執着心が対照的(笑) 畠中さんはパガニーニの保護者のような忠実で愛情ある執事でした。山寺アルマンドも気になります。

 

パガニーニは木内健人さんを選択。才能の限界に気付き両親の期待に応えられない苦しさと気弱さが悪魔を引き寄せてしまったニコロ。人の弱さや脆さをよく表現されています。

タイトルの『CROSS ROAD』ってそこから来ているのか~と目から鱗でした。大した才能やドラマチックな人生はなくても、誰にでも人生の岐路はありますもんね。パガニーニからベルリオーズへの忠告は、客席のひとりひとりにも語り掛けられているようで、言葉に重みがありました。

 

題材は面白くパガニーニが演奏できる曲数が減るにつれ、どうなっていくのだろう、最後はどうなるのだろうと入り込んで観ていたのですが、暗転の多さ、場面のつなぎの間が気になりました。耳に残る歌もあったのだけど、中途半端な拍手で終わる歌もあったり、ブラッシュアップの余地はまだまだ十分にあると思います。

 

それにしても、2023年のアテプリでヴァスコさんのパガニーニのヴァイオリンソロを聴いたなんて、あんな贅沢なことなかったわと改めて思い出しました。あの時間をもう一度おねがい