マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』@東急シアターオーブ

 

原作:ウィリアム・シェイクスピア
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
演出・振付:マシュー・ボーン
美術・衣裳デザイン:レズ・ブラザーストン
照明:ポール・コンスタブル
音響:ポール・グルースイス
オーケストレーション:テリー・デイヴィス

 

出演:ニュー・アドベンチャーズ
ロミオ … パリス・フィッツパトリック★ / ジャクソン・フィッシュ / ロリー・マクラウド
ジュリエット … モニーク・ジョナス★ / ハンナ・クレマー / ブライオニー・ペニントン
 

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来日したら必ず観に行くマシュー・ボーン作品

『赤い靴』がコロナ禍で中止になったので、2019年の『スワンレイク』以来でした。実に5年ぶり、長かった泣き笑い

今回は「ロミオ&ジュリエット」がモチーフの近未来の物語。

 

毎度のことながら、あらすじや解説は雑にしか見ておらず、モンタギュー家とキャピュレット家がどう置き換わっているのかと途中まで訝しげに観ていたら、そもそも家の対立という設定がなかった。


舞台は反抗的な若者たちの矯正施設“ヴェローナ・インスティテュート” わかりやすく対立しているのは抑圧された若者たちと彼らを支配する大人たち。支配者側の代表が看守で、彼は収容者を厳しく抑圧します。ある日、看守に叱責されている他の女性収容者を庇いターゲットになったジュリエットは別室に連れ込まれてしまいます。その後も気丈に振る舞い続けるジュリエット。

 

その看守が“マキューシオ”を殺すまで”ティボルト”だとは気づかなかったあせる そして原作ならロミオが衝動的に…という場面で、抑圧されていた若者たちが一致団結、復讐に立ち上がるまでは想定内でしたが、その中にジュリエットもいて実際にティボルトに手をかけたのには驚き目が冴えました。

 

2幕はさらなる衝撃と悲劇が待ち受けてました。繊細で軟弱な印象だったロミオがジュリエットと愛し合うことで強くなっていったのとは対照的で、強く勇気ある女性という印象だったジュリエットがティボルトの件で苦しみ崩壊していく姿が哀れでした。

 

2人のパ・ド・ドゥは2幕が情熱的で官能的で切なくて1幕より好き。隔離されているロミオにジュリエットが会いに来るという設定も、古典とは逆で今時なのでしょう。

 

マキューシオはゲイで、若者たちの理解者であるローレンス神父は女性が演じ、ロミオの両親は体裁を気にする社会的成功者として描かれているあたり、古典を新たな解釈で蘇らせるマシュー・ボーンらしい。

 

振付で男女別の施設の部屋を瞬時に入れ替えて見せる鮮やかさ。若者の内なるエネルギーが爆発したようなダンス、反して薬で大人しくさせられている時の機械的な動きや無表情から、言葉がなくてもたくさんの状況や心理が伝わってきます。マシュー・ボーン作品は、古典バレエに詳しければ違う視点から比較したり音楽ごと楽しめそうですが、私はミュージカルに近い感じがしていて面白いと思ってます。

 

今回、全体が綺麗に見えそうという理由で通路後ろを確保しましたが、演劇的な楽しみには表情が見える席のほうが良かったと反省。オペラグラスも使うつもりでしたが、ミュージカルと違って常に動いているので、あまり上げられなかった。次回はいつも通り前方ブロック中程にしよ( ..)φ