VIOLET @東京芸術劇場プレイハウス

 

音楽:ジニーン・テソーリ

脚本・歌詞:ブライアン・クロウリー

原作:ドリス・ベッツ『The Ugliest Pilgrim』

演出:藤田俊太郎

 

出演:

ヴァイオレット 三浦透子/★屋比久知奈

フリック 東啓介

モンティ   立石俊樹

ミュージックホール・シンガー sara

ヴァージル 若林星弥

リロイ  森山大輔

ルーラ  谷口ゆうな

老婦人  樹里咲穂

伝道師  原田優一

父親  spi

 

ヤングヴァイオレット 生田志守葉/嘉村咲良/★水谷優月

 

スゥイング 木暮真一朗 伊宮理恵

 

ストーリー(公式より):

1964年、アメリカ南部の片田舎。
幼い頃、父親による不慮の事故で顔に大きな傷を負ったヴァイオレットは、25歳の今まで人目を避けて暮らしていた。
しかし今日、彼女は決意の表情でバス停にいる。
あらゆる傷を癒す奇跡のテレビ伝道師に会う為、西へ1500キロ、人生初の旅に出るのだ。長距離バスに揺られながら、ヴァイオレットは様々な人と多様な価値観に出会い、少しずつ変化していく。長い旅の先に彼女が辿り着いたのは―

 

 

追い付いていない観劇記録を書ききるつもりのGW

まずは『VIOLET』

 

2020年4月の全公演中止と同年9月の3日間だけの公演を経ての再演

私にとっては3度の正直でようやく観劇が叶いました音譜

 

「片田舎に住んでいたヴァイオレットがバスで初めて旅に出る話」

ざっくりし過ぎなその程度の予備知識から想像していた感じと違い、1964年のアメリカ南部を舞台に、時代背景と社会問題で重苦しい始まりでした。

 

ヴァイオレットは25歳だったのですね。「青い鳥」を探して旅しているよう。テレビ伝道師に傷を癒してもらえると本気で信じ、周囲に心を閉ざして、容姿にばかり拘り生きている彼女がとても幼く思われて、まだ20歳前なのかと観ながら思ってました。

 

歌重視で屋比久知奈さんを選びましたが、三浦さんのお芝居もとても良くて、二人のヴァイオレットは最後の印象が違うと感想を見かけたので気になります。

 

ヴァイオレットがバスで出会う黒人兵士のフリックと白人兵士モンティ。それぞれ東啓介さんと立石俊樹さんが演じていて、この二人がとても良い。ようやく既視感のない役で東くんが観られました。お芝居が繊細で歌はパワフルで、ヴァイオレットとモンティを前に引いてしまう姿が切なかった。立石くんは若さゆえの傲慢さと軽薄さもありつつどこか寂し気で魅力的。

 

最後モンティはベトナム戦争へと出兵していきますが、屋比久さんと立石くんと東くんなら、ベトナムで違う物語を始められそう。

 

前回、吉原光夫さんと成河さんはどの役だったのだろう?と観劇中にふと思い、帰りに調べたら、フリックとモンティだったのでビックリしました。4年前とはいえ。

てっきり吉原光夫さんは父親役かと思いましたが、実は初演から今回と同じspiさん。父親は基本的にヤングヴァイオレットと二人で回想のようなカタチで登場します。ラスト近くに初めて大人ヴァイオレットと向き合って、それが実際にはあり得ないこととわかりながらも、二人のぶつかり合いに涙腺崩壊。ハンカチは鞄の中だったので、手で涙を拭い続けました。愛情はあれど不器用なspi父の存在あってこそ、際立つシーンでした。

 

この作品、音楽が「ファン・ホーム」「モダン・ミリー」「シュレック・ザ・ミュージカル」と同じ方。音楽の多様さに感心します。

 

出演者が11人しかおらず他の出演者はメインの役以外にも色々演じていて、実力者揃いで歌が上手く濃い作品でした。樹里さん、普通の人も上手くて老婦人に親近感が湧きました。原田優一さんの伝道師は胡散臭いのだけど、裏では疲れた中年男性の悲哀が滲み出て、人生を感じさせたところがもうベテランの域。

 

終演後はプログラムの購入列が長く伸び、リピーターチケットの案内にも人が群がっていました。リピートする余裕がなかったけれど、再演があったらオンステージシートに座ってみたい。