「いい大学いい会社に入れば人生安泰」と盲信できた時代はとうに過ぎました。東大に入れば一生安泰の勝ち組というわけにはいかず、キャリアを自分で考え組み立てていかねばならなくなりました。自分の人生のイメージを自分で考え行動する大人にならなければ学歴は宝の持ち腐れになります。蛇足ですが「いい会社に入る」ことが人生最大の目標というのであれば、学歴以外でも「いい会社に入る方法」があることくらいは知っていなければなりません。

医学部を卒業し医師免許を取ったからといって全員が医者になるわけではありません。医者とは全く違った道を進む人もいます。今、そういう人が明らかに増えています。彼らは自分のキャリアを自分の頭で考えているからです。医師免許を取得したからといって「皆と同じに医者になれば人生安泰」という時代はとうにすぎたことを知っているのです。

東京大学法学部を卒業したからと言って皆が皆、弁護士や官僚、有名企業に就職するわけではありません。さまざまな選択肢の中から自分の頭で考え、選び、行動する人がちゃんといし、そういう人が増えつつあります。林修先生や小林尚先生がその例です。私は息子たちに、さまざまな選択肢から自分の頭で考え、選び、行動し、転んでもすぐ立ち上がるメンタルや身体を能動的に鍛え続けるライフスタイルを獲得してほしいと思い子育てをしました。勉強やスポーツはそのためのツールです。人生は長いのです。

長男が中学生になった時、月ごとの定額小遣い制を止めました。その代わり瀧本哲史氏の「僕は君たちに武器を配りたい」を読ませ、世界を支配する資本主義という経済の仕組みを勉強してもらいました。そして「必要なお金は自分で稼いでちょうだい」と唆したのです。最初のうちは家の中で「洗濯をしたら幾ら、掃除をしたら幾ら」みたいな飯事遊びレベルの真似をしていましたが、次第に祖父(私の父親)を顧客に見立て「爺ちゃんが困っていることをヒアリングしそれを解決することで報酬を貰う」というやり方を覚えました。すると今度は同級生に「困っていることはないか」と聞き回り、それを解決する方法を考え見返りにお金を貰うという行動を始めたのです。瀧本先生の本は実に偉大です。瀧本先生のわかりやすい本のお陰で資本主義の巧妙な仕組みに興味を持ち、実際に行動を始めていた長男は高校卒業を機に「資本主義大国アメリカで勝負する」と言って日本を出ていきました。その先自分がどうなるかはわからないけれども「とにかくがんばる」と言ってひとりで空港へ向かったのです。その後、長男は一度も日本に戻って来ません。それくらい長男の人生の動力源になった本ですのでみなさんにも紹介したく思います。自分のキャリアを考えるためには武器が必要なのです。