柳沢幸雄先生の「男の子の自己肯定感を高める育て方」からです。柳沢先生一家はうちと同じで子どもは全員男の子です。男の兄弟がいない私にとって男の子どもと暮らすというのは人生初体験だったので、かなり観察しました。観察しないことには対応を考え決めることができないからです。元々私は観察好きだったので、観察については楽しくやっていました。佐藤ママも同じことを言っていましたね。観察は子育てのキーワードのひとつです。



男の子というのは、特に小さいうちは、女の子より遥かに手がかかります。着替えにしても学校の準備にしても、宿題にしても、放っておいては一向に進まないので、ついつい親が手を出してしまう。そんな生活が当たり前のようになっているご家庭も多いことでしょう。これは特別なことではありません。
しかしその「当たり前」から離れなければならないのが思春期です。このまま同じように手をかけていたら、独り立ちとしての自立も、自分の意思で人生を切り拓く自律も叶えることはできません。
思春期で大切なのは、「手は出さない、口は出さない、目では見ている」ということです。
つまり子どもには「自由に振る舞っている」と感じさせておくけれども、しっかり見守っておく。何をしているか、誰とどこに行くかなどを把握しておく、ということです。しかしこれは「言うは易く行うは難し」。何故なら手を差し伸べたり、先に注意をした方がよっぽど楽だからです。特に失敗するとわかっていることを、ただ見ているだけというのは、よほど忍耐が要ります。
尻を叩いて勉強させることができるのは、せいぜい小学生までで、その後は、自分でやろうと思わなければ、たとえ机に向かっていたとしても身にはなりません。一度赤点でも取って「やっぱり勉強しなければダメだ」と本人が感じることの方が、よほどその後の人生にプラスになります。子どもの思春期は、親の子育てを大きく変える分岐点でもあるのです。


いかがでしょうか。柳沢幸雄先生の「男の子の自己肯定感を高める育て方」は何度読んでも読みすぎということはありません。毎回、新鮮な気づきがあります。思春期は分岐点という警告も「そんなことわかってるよ」とスルーしがちですが、子どもの思春期を「親の子育てを変える分岐点」と認識し、適切に対応している人がどれくらいいるかといえばそう多くはないでしょう。しかしヒトの成長発達において思春期は心身ともに激変する時ですから、対応を変えるのは当然です。小学生に対するのと同じ思考や姿勢では困るということです。目下、お子さんが思春期に差し掛かろうとする親御さんは是非この事を心に留めておいてください。

このところ12歳13歳の子どもを精神科に連れてくる母親が増えています。理由は「子どもの態度行動が理解できず扱い方がわからない」というのがもっぱらですが、理解できないなら静観し、工夫してなんとか理解に努めましょうとしか言いようがありません。それをいきなり病気ではないかと考えるのは行き過ぎです。私が母親を診察室の外に出し「両親のことをどのように思っていますか?尊敬していますか?」といった質問をするとほとんどのケースで「尊敬はしていない」と返ってきます。ここが問題なのです。子どもから見て親が尊敬に値しないというのは、子どもにとっては単なる不平不満ではすみません。自己否定の元凶になってしまいます。自己否定が生まれると感情の嵐が炸裂しますから不機嫌や意欲低下、暴言暴力に及ぶのも無理からぬことです。これは病気ではありません。もちろん薬も効きませんよ。特効薬は「親への感謝や尊敬の念」です。今からでも遅くはありません。すぐに取り掛かりましょう。