長男が中学受験を決めたのは他の子に比べだいぶ遅かったのですが、それでも少年野球の練習には欠かさず出ていました。世間の中学受験常識はさておき、我が家の方針は「子どもの好きにやらせる」だったので、「ああしろ、こうしろ」と言わず息子自身の考えや判断に任せていました。子育てヲタクかつ精神科医の私の考えは、本番はあくまで大学入試なので、中学受験は、そこまで目一杯やらなくてもいいと思っていました。手を抜けと言うつもりは、無論ありませんでしたが「ほどほどでいいんじゃない?」的な気持ちで傍観していたのです。

家族で夕食を食べていた時、野球の練習と受験勉強の両方に全力投球の長男の食欲が落ち気味なのに気付いた私が、

無理しちゃ、だめよ

と言ったその時です。

おい。変なこと言うなや

和気あいあいのムードを一変させる、それまで聞いたこともないレベルの、ドスの効いた声がしたのです。その局面で夫がそのような言い方をするとは予想だにしなかった私は、あまりの迫力に凍り付いてしまいました。


今のりんに「無理すんな」とか、しょーもないこと言うなや。今が「無理する」とこやろ。なあ、りん。

うん。大丈夫。できるできる。全然きつくない。

ほらな。こいつはそんな弱ないわ。がんばってる真っ最中に「無理すんな」とかしょーもないこと言うたらあかんわ


私は泣いて詫びたい気持ちでした。自分から頑張っている子の気持ちを、精神科医のくせに、私は全然理解していなかったのです。「無理するな」という不用意な一言が、頑張ってる最中の子の気持ちを挫く可能性があることに気付きませんでした。

ごめんなさい。私、思慮の足りないことを言いました。リンが頑張ってるのに、気持ちを挫くようなこと言ってしまって、穴があったら入りたい、、

ダイジョーブダイジョーブ、全然余裕。勉強も野球も両方ちゃんとやる。どっちかにするとか、かっこ悪いことしたくない

よう言った!!!痺れるわーかっこいいぞ、りん!

私は子育てオタクを自称しながら、またも大事なポイントを外し、夫に助け舟を出してもらう羽目になりました。心理的にも身体的にも子どもがぐいぐい伸びている最中に「無理しちゃだめ」などという利いた風なセリフを言ってしまうなんて、「口が滑った」では済まされないレベルの失態でした。以来私は少なくとも息子たちには「無理しちゃだめよ」的なセリフを2度と言うまいと心に決めました。自分が育ててきた息子たちを、強く信じる気持ちの証として、無理を押してがんばるのを笑顔で応援できる母親でありたいと思ったのです。