他罰的性質は人を生きづらくします。「自分は悪くない、悪いのは他人」という考えでは事態を好転させることができないからです。いくら他人を責めても他人を変えることはできません、変えることができるのは自分自身の考え方です。ここにできるだけ早く気づくか気づかないかがのちの人生を左右します。

自分自身の至らぬ部分を改善しようという意識の乏しい人は、社会生活のいたるところでストレスを感じるようになります。他人を自分の思い通りに動かすことばかり考え、自分の思い通りにならない他人を敵視し攻撃ばかりいると、人を信じることができなくなる。自分を護ることばかり考えるうち、他罰的性質に拍車がかかり、すると必ずと言っていいほど精神の具合が悪くなり、かつ、そういう人の病状は良くなりません。

他罰的性質は親の不適切な言動行動の産物です。普段から人を責めてばかりいる親の子どもは、他罰的性質を強化して受け継ぎます。すると親以上に他罰的になってしまう。他罰的性質は自制心の成熟を阻害するのでのちの社会生活に多大な支障をきたすようになります。

精神科を受診する多くの人の最大の問題は人間関係です。会社や学校、部活、恋愛相手、親、家族。様々な人間関係にストレスを感じるのは自制心不足が災いしています。自制心が不足しているから怒りや不満が吹き出し、他人を責めてしまうのです。自制心が成熟しないことには人間関係を適切に対処することができません。

今や社会の至る所でハラスメントが勃発していますが、弱肉強食の社会を作ってしまったのは私たち大人です。ハラスメントが勃発する今の社会は<社会を構成するひとりひとりの心がけと行動が周りに良い影響を与えることで社会がだんだん良くなっていくという好ましい風潮>を作ることができなかった私たち大人の赤点通知表です。こんな大事なことを子どもに教育しない悪循環が今の殺伐とした社会を作ってしまったのです。ハラスメントを行った者を悪人扱いするのは、単に白黒思考の権化なだけで、世の中を良くする好ましい循環には何も貢献しません。むしろ白黒思考を強化し、他罰的思考の人間を増やすだけです。

些細なことを不愉快に感じ、不平不満、愚痴を垂れ流す人が蔓延する社会を想像してみてください。毎日、そこらじゅうで暴力や凶悪犯罪が勃発し、おちおちコンビニに行くことすらできなくなるかもしれません。人生の幸不幸を規定するのは人の考え方受け取り方なのです。