のんびりした子で隣に座らないとぼんやりして宿題が進まない。隣にいてもぼんやりして鉛筆が止まります。サポートと宿題の後にゲームなどの楽しみでなんとか回せてますが、このままではいつか宿題が終わらなくなるのではと不安です。勉強のスピードを上げる工夫などをされておられましたでしょうか?


してました。うちはゲームさせなかったので。馬の前にニンジン下げて走らせるのあるでしょ。走らせるニンジンの代わりにゲームをさせるというのは、結構、後でえらい痛い目に遭いますよ。お母さんが。ゲームのために勉強するんじゃなくて、勉強は勉強のためにするんですよ。そういう甘い考えをまず持たせないってことですね。
勉強して当然だよねって話ですよ。だからね、子どもには「勉強して当たり前だよね」って。


予々佐藤ママは「勉強時間をできるだけ短くするように工夫した」と述べています。勉強の成果は時間で計ることはできません。「何時間勉強した」に意味はないのです。このことを知らぬまま我が子を中学受験に挑ませるのは危険です。そして子どもに勉強させるためにニンジンをぶら下げることについても佐藤ママは「後で痛い目に遭いますよ」と警告しています。私は精神科診察室でその「痛い目」を毎日見ています。大人になってもまだ尚モチベーションだのやる気だのと言っている人たちです。

ニンジンをぶら下げなければやらないということは「そもそもやりたくない」ということですから。「やりたくない」の根本治療をせず、ニンジンで応急処置的に勉強させても、次第にその効果は薄れ、もっと大層な餌(ご褒美)をぶら下げなければならなくなる。やる気になってから勉強や仕事をする、やる気にならないと勉強や仕事ができない、という脳構造に支配された大人になってしまいます。佐藤ママの言う「痛い目」とはこのことです。非常に面倒くさい。

行動開始の部分をニンジンで釣っても、上の空で机の前に座っていても意味がありません。成果はしれています。そうならないようにするための根本治療が、「勉強して当たり前だよね」というムードを作ることです。家中がそのようなムードであれば、子どもも「そういうもの」と素直に受け取るでしょう。勉強を苦行に思うムードが、子どもが勉強をしたがらない原因になっているというのは今や周知の事項です。

佐藤ママは、子どもが勉強したがらない一番の理由は「わからないから」と繰り返し強調しています。わからないから嫌がる。だったらわかるように工夫すれば良い。シンプルな論理です。そして親が子どもの身にならないから、工夫を凝らすことができないことも繰り返し強調しています。佐藤ママはとことん子ども視点に立ち、嫌がらないように嫌がらないようにと配慮を重ねてきました。ここを見習わずどこを見習うのでしょうか。例えば勉強時間について。佐藤ママも「短い時間にブツブツ切ってやらせていた」と言っています。それなのに、最初から30分も1時間も続けてやらせようとするから、子どもが億劫がって勉強したがらない。子どもの立場になってみればわかるでしょうという話です。

多くの親御さんは、まず集中させて勉強させようとするけれども、勉強って集中してからするものじゃなくて、しているうちに集中してくるものです。

この話は佐藤ママに限らず小林尚先生や林修先生も言っている大事な原則です。「集中してから勉強」ではなく「やっているうちに次第に集中して来る」です。やる気も同じ。やっているうちに乗ってくるのです。ここを間違えると、子どもはいつまで経っても「集中しない子」「やる気の出ない子」のレッテルを貼られたままです。そうならないようにするには、短い時間を「まずやる」「とにかくやる」を徹底する。ここをクリアしないことには集中の話になりません。たった10分とわかっていれば、子どもも嫌がずにやりますよ。餌をぶら下げなくても「10分ならやるか!」という気持ちになります。何なら5分でもいい。ニンジンをぶら下げるよりよほどマシです。佐藤ママがいつも言っているように、具体的にやることを示し、

これとこれと10分でやってね

と言うのです。相談者は「勉強のスピード」の話を質問していますが、佐藤ママの回答は、スピードの話以前に「勉強に向き合う姿勢」をちゃんとしないと話になりませんよ、ということです。ニンジンをぶら下げなきゃならないくらい嫌々やっているのにスピードの話をしても仕方ないでしょうという話です。この優先順位は必ずおさえましょう。「そういう甘い考えをまず持たせないってことですね」というのは、「大事なのはソコ(スピードの話)じゃなくて姿勢の話ですから」ということです。