今や、精神科外来に訪れる若者の9割が「会社や学校に行きたくない」と訴えます。そしてその9割が人間関係が苦しい、怖いと言っています。勝手に「嫌いな人苦手な人」を作り苦しんでいる。何故こうも「嫌いな人」を作ってしまうのでしょうか。理由は簡単です。自分の思い通りにならないことにストレスを感じる脳だからです。例えば、自分の上司が指示を出すだけ出して懇切丁寧に教えてくれないとしましょう。すると「懇切丁寧に教えてくれないこと」を理由に「上司のくせに教えてくれないなんて、そんなの上司が悪い」となり「丁寧に教えてもらえない私は被害者」という論理を組み立ててしまう。あるいは「上司の言動がキツくて圧迫的」を理由に「優しく言ってくれない上司が悪い」となり「キツく言われている自分が被害者」という論理を組み立ててしまう。論理が極端なのです。理由は他にもいろいろありますが今回は解説しません。とにかく自分で苦手な人嫌いな人を作っては具合が悪くなっている。この事実から目を背けてはいけません。


苦手な人や嫌いな人を作りがちな性質というのはライフスタイルなので、子どもは親の影響を多分に受けます。要するに親も同じなのです。例えば、幼少の我が子が他の子どもとトラブルを起こしたりすると「うちの子は悪くない」という意識を過剰に持つ親です。幼少の子供に「あなたは悪くないあなたは悪くない」と呪文のように唱え続ければ、のちに子どもが「自分は悪くない、悪いのは他者」という論理を組み立てがちになるのは目に見えています。どちらが良くてどちらが悪いという白黒思考を子どもの脳に植え付けた結果とも言えます。が、現実の人間関係は白黒思考で対処できません。更にそこに共依存が加わろうものなら事態はもっと複雑かつ深刻になり、「わかってもらえないこと」を不幸そして被害的に受け取るようになり「わかってくれない他者」を悪者とみなすようになる。こうなっては社会生活などできるはずがないのです。藤原先生も述べていますが、共依存は多くの人が思っている以上に存在します。だからこれほどたくさんの人が精神科に訪れるのです。


人間関係に脆弱にしないノウハウなどありません。が、ポイントを抑えることで回避できます。ポイントとは、自分以外の他者は自分の思い通りに動くことは絶対ないということです。色んな人が色んな考えや価値観を持って他者と関わり生きている。そういうことを子どもが社会生活を始める幼児の頃からそれとなく教えていくのです。そのためには親がこのポイントを押さえていなければ話になりません。そういう観点から「挨拶」や「話を聞く」「譲り合い、分け合い」や「自分から謝る、仲直りの握手」のしつけは非常に大事なのです。ことに「自分から謝る」習慣はのちの子どもの人生に多大な貢献を及ぼします。理不尽耐性が強くなるからです。逆に「自分は悪くない」思考は理不尽耐性を弱くする。当たり前ですね。