久々、小林尚先生の動画です。小林先生は大学受験のスペシャリストですが、今回のテーマは中学受験に挑む生徒や親にも、仕事をする大人にとっても、そして人が健全な人間関係を構築する上でも重要な話です。まず結論です。デキる保護者とデキない保護者の境界線は、

自分とは相容れない考え、予想外の考え、全く新しい考えや意見に対し、拒否反応を示さず、いったん受け入れ、そこから思考できるか

です。いかがでしょうか。これ精神科医療でも重要なんですよ。具合の悪い人の共通点は「否定から入る」というより「反射的に否定する」ですから。こうなるとせっかくの情報が無意味になります。そればかりか人間関係もギクシャクしてくる。議論もできなくなるわけです。社会的にもNGってことです。

保護者に限らず仕事をしていてもそうなんですけど、優秀な人というのは、そのデータ(情報)を前提として、どのようにすればうまくいくのか、成功するのかを考えることができる。そうじゃない人は、自分が思っている固定観念、ステレオタイプを捨てることができず、情報提供を受けても疑ってしまう。つまり自分の物差しでしか物事を図ろうとしないのです

いかがでしょうか。私はこのような話になると必ず「算数や数学って本当に大事」と思います。何故なら算数や数学は新しい考え方を受け入れる学問だからです。「なるほど、そういう考え方もあるのか」という感動を味わう学問とも言えます。

精神科医である私は息子たちに「世の中には実に様々な人が生きていて、その人たちが日々様々なことを発信し、様々な行動をとっている」と1万回は言ってきました。だって現実がそうですから。離島で仲良し数人で生きているわけではないのです。当然、自分と反対の意見を言う人や寛容に受け入れ難い行動をとる人もいる。そういうことを「反射的に」否定したり怒りをぶちまけたりしたら、それはその人がダメということになります。社会生活できなくなりますから。精神科における適応障害も往々にしてこのような性質が源になっていることが多々あります。

今回の動画で問題にしたいのは、保護者が、ではなく、そういう保護者に育てられた子どもが、という話です。自分の思い通りにできない相手や、相容れない意見に対し、怒りをぶちまけたり否定し排除するという行動をとる親の思考行動習慣は子どもに受け継がれます。すると子どもはいっそう生きづらくなる。当然中学受験→大学受験にも支障が出ますし、仕事をするようになってからは更に困ります。なので「まずは受け入れる、いったん受け入れる」を心がけましょう。こんなのは練習です。練習次第でできるようになりますから。しかも格好の練習ツールが目の前にいるじゃないですか。子どもです。子どもはいちいち予想外のことをしてくれますから。