恋愛中毒、恋愛依存という言葉が普通に聴かれるようになってもうだいぶ経ちます。令和の今ではめちゃくちゃ増えました。「別れるくらいならあなたを殺して私も死ぬ」「24時間一緒じゃないと寂しくて死にたくなる」「彼氏の全てを知りたいのでついスマホを盗み見してしまう」「自分以外の友達を全部切って欲しい」という気持ちに囚われ、自分をどんどんダメにしてしまう人たちです。多くの場合、親の人間関係スタイルを継承しています。つまり親も依存気質であることが多いのです。特に母親が多い。男を取っ替え引っ替えして離婚を繰り返し、子供を不安定な境遇に引きずりこむ。そればかりか男と口論喧嘩が絶えず、泣き叫び、怒号が飛び交い、子供の養育環境としては最悪というより地獄です。これで子供の具合が悪くならないはずがありません。そういう親に育てられた子どもの何が不幸かといえば<人を信じる気持ち>が育たないことです。精神科にはそのような人が実にたくさん訪れます。中には「信じる感覚すらわからない」という人もいます。

精神の具合を悪くする人にとって最も予後不良な性質は攻撃性です。攻撃性は被害的な気持ちや警戒心と表裏一体です。いつも警戒しているから、些細なことに敏感に反応し、自分を守るために先制攻撃を仕掛けるという論理ですが、そんなことは社会生活では通用しません。すると健全な人は離れていき、残るのは不健全な人ばかりになる。だからそういう人たちは人と人との適切な距離を保てず、常に人間関係が安定せず、ごちゃごちゃに苦しみ、事態をいっそうややこしく複雑にし、どんどん<人を信じることのできない自分>を強化してしまうのです。