親はついつい子どもの学力に注意の重心を持っていかれがちですが、それでは困ります。動画内で高濱先生がホワイトボードに絵を描いていますが、それが子育ての全貌を理解する上で非常に役に立つのでよくご覧ください。私もノートに写しました。それではまず最初に高濱先生が提唱する「子育ての絶対ルール」を紹介しましょう。

どこかに正解をイメージするから悩む

以前から私のブログでも「子育てに唯一の正解はない」と繰り返し申し上げてきました。しかし情報氾濫社会に生きていると、どうしても「唯一の正解」を探してしまう。コレが頭の中や事態を複雑にしていることにいい加減気づかねばなりません。このことについて高濱先生は非常にスッキリした表現を作ってくれました。それが、正解をイメージするから悩む、です。どこかに正解があると思うから悩み、事態を複雑にすると言えば少しは理解しやすいのではないでしょうか。少なくともこのことは十分理解していただきたいのです。

高濱先生は子どもの成長発達の基盤の部分に「自己肯定感」を置いています。これはあくまで子育ての全貌を簡潔にイメージするための模式図なので、まずはそういうものとして受け入れましょう。次にその自己肯定感の由来を ① 親の愛情 と② 強い心 としています。自己肯定感というのはこの2つの要素で成り立っているということです。①は親の子に対する無償の愛です。佐藤ママの言う「最後の砦的な安全基地」ですね。他の全ての人が敵になったとしても、親だけは子どもの味方である、それくらいの愛情ということです。これにより子どもが親への絶対的な信頼感を獲得しないことには自己肯定感が育まれないということです。そしてもうひとつが②の強い心。これには「しつけ」や「辛い経験」が必要です。特に「辛い経験」は欠かすことができず、この中には子ども同士の喧嘩や、自分の思い通りにならない経験、理不尽な経験などが入ります。高濱先生は、近年の親は「しつけ論」にばかり振り回され、結果的にこの「辛い経験」を奪ってしまっていると警鐘を鳴らしています。

精神科医の私が皆さんにお伝えしたいのは、親が子どもの最後の砦的な安全基地となり、子どもの「失敗経験」や「辛い経験」を見守るマインドを持って欲しいということです。何故なら、こういった経験をすっぽり欠落させた子どもが大人になり「会社に行きたくない」「仕事のことを考えると死にたくなる」などと言うようになる令和の現状があまりに深刻で悲惨だからです。