不登校児を学校に行かせるべきか?問題です。不登校の原因についての統計をみると、①無気力不安 ②生活リズムの乱れ、となっており、世間が思っているほどいじめが原因ではないように見える点。大空氏はこれについて統計処理のサンプルを集める時点での不備を指摘しています。親や教師が「いじめ」をしっかり把握できているとは限らないから、この結果は必ずしも正しくないと、鋭い考察を述べています。が、いずれにせよ、無気力や不安、生活の乱れが不登校の大きな原因になっていることは確かです。なので少なくともこの点は改善する必要があります。

高濱先生は子どもの無気力、不安の理由を①人目を気にしている、②比較をしている、③ やらされて生きている、④コンプレックス と説明しています。こういうものに支配されてしまうと、

本当の自分を正しく見て自分の資本で楽しく生きていけばいいのが人生なのに、「どれやれば褒められますかね」みたいな生き方が始まっちゃう。

と述べています。これは完全に大人が作った状況です、とも。これに対して大人がまずすべきは「子どもに直接話を聞く」と断言しています。最低でも「話を聞く」仕組みは担保しなければならないと。

今回のテーマの、子どもが「学校に行きたくない」と言った時、大人はどうすればいいのか?という課題に対し、高濱先生は、無理に行かせる必要はない。親は原因を探らず子どもの居場所を作る、と述べ、大空氏は、「学校に行かなくてもいい」と言っている人は子どもの未来に責任を持たない成功した大人たち、と述べています。更に高濱先生は、

まず第一に言いたいのは、子どもが学校に行きたくないと言った時、大人はどうすればいいのか?という問いがまず間違っている。答えを正確に言うならば「それぞれ」なんです。個々に違うんです。その中で「学校にちゃんと戻す」という考えがかえってマイナスのこともある

と述べています。ポイントは「子どもが学校に行きたくないと言った時、大人はどうすればいいのか?」という問いに間違いがあるという点。この意味がお分かりになりますでしょうか。説明します。この問いは「唯一の正解」を求める問いになっているからです。そもそもこういう問題について唯一の正解はないというのに、問い自体が唯一の正解を求める問いになってしまっている。そこが間違いというわけです。更に言うなら、このような問いを生み出してしまう考え方自体が間違っているということでもあります。精神科医の私に言わせれば、間違っているどころか「諸悪の根源」と言っても過言ではないでしょう。どこかに正解があるという思い込みが、個別に対応しようという姿勢を失わせているからです。「正しい答え通りにすれば成功する」という怠惰な考えが、問題をより複雑にしてしまっているということです。不登校の問題を複雑にしているのは当事者の親のみならず大人の多くが「唯一の正解を求める思考」になっていることなのです。