兼ねてから申し上げていますが、愚痴は公害です。周囲の人間に悪影響を及ぼしひいては自分の首を絞めます。特に子どもに対する悪影響は甚大で、子どもの将来を滅茶苦茶にする危険性が極めて高い行為だということを自覚する必要があります。今回は③を取り上げます。

① 心を病みやすくなる
② マイナスな思い込みに苦しめられる
③ 健全な人間関係を築けなくなる

子どもに愚痴を聞かせ続ける親は子どものことをあまり見ていない。子どもの気持ちを考えていないのです。もしそれができたら愚痴を聞かせ続けるなんてとてもできません。子どももそれは感じ取っていて、自分は見てもらえていないとか、関心を持ってもらえないと思っていたりします。それでも子どもが親の愚痴を聞くのは、親を助けたいという気持ちもさることながら、そうすることで自分の存在価値を感じられるからだと思われます。これの何が問題かというと、他の人間関係でも同じことをするようになるってことなんです。例えば毎回のように愚痴の聞き役になったり、自分を犠牲にして人の役に立とうとしたり、自分を後回しにすることで相手との関係を築いていこうとしたり、そういうことをしてしまう。そうしないと自分がそこにいる意味とか価値が感じられないからです。自分を犠牲にすると一方的な関係となり健全な人間関係を築くことができません。

いかがでしょうか。健全な人間関係を築くことができない、これは人生において極めてマイナスです。今、多くの若者のみならず中高年の大人までもが「人間関係が苦しい」と訴え精神科に訪れます。当たり前ですが、彼ら全員が発達障害であるわけがなく、他にも色々な理由で人間関係を苦しく感じるようになっている。そのひとつが今回のテーマ「親の愚痴」です。「健全な人間関係を築くことができない」を精神科治療で改善するのは不可能です。人間関係構築能力は幼児期から思春期までの長い時間をかけ育まれるものですから、外来の短時間の診療でどうにかなる問題ではないのです。世の中にある「取り返しのつかないこと」のひとつが、この人間関係構築能力を育む時期であることは肝に銘じておきましょう。