これを人生の困難を乗り切る方法として使う。つまり人間の気持ちがこのように動くのだということは、良いとか悪いとかということではない。だから何か苦しいことがあった時には、例えば「このことと癌になることとどちらが苦しいか」と考える。例えば騙されて100万円を取られてしまったとする。すると悔しくて夜も眠れない。しかし「癌になるのと騙されて100万円を取られるのとどちらを取るか?」と考える。日本人の死因の第一位は癌である。我々は誰でも癌になる可能性はある。癌に苦しんでいる人は多い。あまりありそうもない突飛なことではなく、自分に起きそうなことを今の悩みと比較して考えてみる。その比較で今の苦しみを考える。「今、悩んでいるこのことと、付き合っている恋人といざこざがあることとどちらが苦しいか」と考えてみる。「このことと、三年分の給料をなくすこととどちらが苦しいか」と考える。「このことと、親友に裏切られることとどちらが苦しいか」と考える。次々に色々ありそうなことと比較していく。すると今自分の直面している苦しみの位置が見えてくる。位置とは自分にとっての位置である。色々と比較して位置が見えてくれば、「あーこのことは自分にとってこれだけのことか」と理解できる。こうしていくとものすごいことに思えていたことが「なんでもない、取るに足らないこと」に思えてくる時もある。「もう生きていけない」と思っていたことが、「なんだ、これだけのことか」と思えてくることもある。そのくらい人間というのは勘違いをする。人はよく自分の意識、注意を向ける場所を間違える。注意を向ける場所が違うことで「生きるか死ぬか」というほどの問題が「心配するほどのことでもない」と思えることもある。そのくらい、自分の注意をあることに奪われるというのは恐ろしいことなのである。自分の心がそのことに奪われれば、そのことが生きるか死ぬかの問題に発展してしまう。それが「悩みを顕微鏡で見る」ということである。自分の今の悩みの位置をしっかりと理解する。それが心の整理学である。


いかがでしょうか。悩んでいることの優先順位をできるだけ客観的に捉えましょうという話です。精神の具合が悪くなりがちな人というのは、えてして目先の悩みに注意を奪われ、しかもそれがさも深刻なものとして受け取りがちです。それを意図的に、いったん目を逸らすことで「生きるか死ぬか」と思い込んでいた問題が「意外と心配するほどのことでもない」と思えることもあるという話です。苦しんだり悩んだりすることを慢性的に続ける習慣をつけてしまうと客観視することができなくなります。なので苦しみや悩みを何らかの方法で優先順位づけし、優先順位の低いものから注意を逸らし手放すことをしなければなりません。そのために色々な対処法がありますが、今回は色々ある対処法のうちひとつが紹介されています。比較して考える。まずは「とりあえず試して」ください。人生において「とりあえずやってみる」はとても大事です。とりあえずやりつつ自分好みに工夫したり改良したりして、自分なりの悩みの対処法をつくっていきましょう。