子どもの自己肯定感が健全に成熟しないと、大人になってからの精神や肉体、社会性に甚大な損害をもたらすことは専門書に書いてある通りです。

自己肯定感は自分自身や他者を「信じる気持ち」の源泉となる大事な能力で、これが未熟だと、思春期以降、日常に遭遇するいろんな人や出来事にいちいち不快感を感じ、不満や文句ばかり言うようになります。サラッと流すことができず、いちいち躓く。多くの人はこれをストレスと呼んでいるのです。

これが今、精神科に訪れ泣いている人たちのリアルです。多くの場合、そんな彼らに医者が適応障害だのうつ病だのADHDだのと病名をつけ、治療に難渋している。成長と発達の未熟さは薬ではどうにもなりません。ものの考え方受け取り方感じ方も、薬では改善しません。適応障害の治療が全然うまくいかないのはこれが原因です。

自己肯定感が健全に成熟しないと思考や行動が複雑となり、自分自身を苦しめることははっきりしています。なので、高濱先生が強調するように、自己肯定感の健全に成長発達こそが家庭教育の要諦なのです。自己肯定感の土台になるのは「親の承認」です。親が我が子を自分と同一視せず、別人格と認め尊重すること。これが自己肯定感の土台です。大人でも上司に認められ、自分の裁量で仕事ができるようになれば自信がつくでしょう。原理はこれと同じです。ただ子どもの場合は知識や経験が大人に比べ断然少なく、親を頂点とした限られた社会で生きているので、親からの承認が必要不可欠なのです。