「わび・さび」とは使い古し、使い込むことで出る艶、古びたモノに由来する洗練された美学のことを言います。古いモノへの愛着、そして反対にキラキラするモノ、見せかけだけのモノ、成金趣味のモノへの拒絶です。それは魂の糧となるモノ、自然、また単に生命を知るということから私たちを遠ざけようとしている技巧的なモノへの拒絶です。この概念は15世紀頃、当時中国とその豪奢さに過剰な影響を受けていた茶道を、日本の茶の巨匠たちがその原点に戻ろうとして生まれたと言われています。この概念が主張することは言葉で全てを表現することはできない、そして禅と同様に、「わび・さび」は理性によって捉えるものではないということ。彼らは問題、悩みや思い煩いのもとである富や金銭を断ち切った生活への回帰を説きました。「わび・さび」とは不用な持ち物を取り除き、その代わりにより深い意味を持つ清貧を選ぶ生き方、シンプルな物事を喜び、移ろいやすく儚いものの味わい方を学ぶことです。考え方として例をあげれば、大量生産されるプラスティック製品とは全く反対の考え方、なぜならば定義によると、オリジナリティは決してコピーできないものだからです。さびがつき、緑青色に変色した鋼など、、、芸術家は「わび・さび」の概念を物事の絶え間ない移り変わりと儚さをその作品に主張することで表現します。そしてその作品の完成にさらに「時間の流れ」という匠の技を加えることによって、作品に古色が与えられるのです。